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DIVOC-12のRenのレビュー・感想・評価

DIVOC-12(2021年製作の映画)
2.5
コロナ禍にあえぐクリエイターの創作活動継続を目的に製作された短編集。4話×3ブロックの全12話、楽しさゴリ押しのお話は意外と控えめな印象だった。以下全話感想。

【三島有紀子チーム:テーマ「共有」】
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『睡眠倶楽部のすすめ』監督:加藤拓人/出演:前田敦子 他
正直、この調子が続いていくとしんどいなと出鼻を挫かれた気分。おそらくこのテーマを10分で描くのはかなりの無理難題であり、導入から結末まで全てが上滑りしていた印象がある。あまり記憶に残らないかも。

『YEN』監督:山嵜晋平/出演:蒔田彩珠 他
自分たちだけの価値観を共有していたあの頃が蘇った。些細な一言、崩壊、更新。アスペクト比を変える演出も映画ならでは。冬美が可愛い....と思っていたら『アルプススタンドのはしの方』の中村守里だった。

『海にそらごと』監督:齋藤栄美/出演:中村ゆり 他
消えた母親を訪ねたらスナックのママだった。短い中にしっかりと、下げて↓上げて↑下げて↓上げる↑、という物語の起伏を入れ込んでいた。俳優陣も、顔面のアップになんとか耐える演技をしていたと思う。

『よろこびのうた Ode to Joy』監督:三島有紀子/出演:藤原季節 他
名も知らない老人の些細な贅沢のために払われる犠牲は、若年層の税金かはたまた今作のようなものか....。新しい藤原季節だった。これを言うとぶっ叩かれそうだけど、自分はハーゲンダッツは過大評価だと思っている。


【上田慎一郎チーム:テーマ「感触」】
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『あこがれマガジン』監督:エバンズ未夜子/出演:小川紗良
この辺りから面白くなってきた!理想郷のレトロなお洒落さから一変、現実の部屋の軽いホラー感。テーマ通り「触れる」行為がとても印象的に描かれており、結構好みの一作であった。監督の次回作を観てみたい。

『魔女のニーナ』監督:ふくだみゆき/出演:安藤ニコ 他
明らかな異色作。まさかのミュージカル、10分間に3曲をぶっ込む暴挙。魔女が日本に来てお花を咲かせる話。撮り方も演出もチープなのに楽曲クオリティがやたら高くて好き。曲はもろにTDLのショー風味だったが。

『死霊軍団 怒りのDIY』監督:中元雄/出演:清野菜名 他
個人的1位!タイトルが既にパキってて好き。分かりやすい “女性性“ の押し付けと否定。短編でゾンビ映画やる気概も良いし、主人公のゾンビ耐性が早すぎて全てがギャグになるのも良い。監督B級映画大好きなんだろうなあ。

『ユメミの半生』監督:上田慎一郎/出演:松本穂香 他
監督の永遠のテーマ「創作へのエール」「映画愛」が遺憾なく発揮された渾身の一作。オマージュは摩耗しきっておりそれ自体がギャグだけどそれに勝る愛を感じる。コメディエンヌ松本穂香は長澤まさみっぽい?


【藤井道人チーム:テーマ「成長への気づき」】
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『流民』監督:志自岐希生/出演:石橋静河 他
最も難解な一作だった。正直全く咀嚼できていない....。家がホテルになっていて、探せど探せど自分の部屋が見つからない。いつか彼女が自分の居場所を見つけるまでのお話?石橋静河の英語の発音がなんか好き。

『タイクーン』監督:林田浩川/出演:小野翔平 他
まさかの窪塚洋介。腕時計を川に落とした男は船で見知らぬ男と対峙する。時を刻む機械は無くとも何か拠り所を見つけられるような....。雑多な中華街・夜の川、匂いまで伝わってくるような演出が冴えた一作であった。

『ココ』監督:廣賢一郎/出演:笠松将
まさかの渡辺いっけい。留学を控えた男が恋人から妊娠を告げられた。懊悩の時間を切り取りたかったという意図は伝わるけど、短編映画であのオチの演出をやられると単に尺足りなかったのかな?と思ってしまう。

『名もなき一篇・アンナ』監督:藤井道人/出演:横浜流星 他
全作品の中で断トツの映像美だった。喪失を埋める旅がどこまでも幻想的。ただ、監督からどんどん毒が抜かれていく不安も。ラストのセリフはありきたりだけど、『DIVOC-12』のテーマと直結していて秀逸だった。


個人的には上田監督のブロックが好き。10分毎に区切りがつくので2時間もそこまで苦ではない。人には勧めないけど、映画好きなら観てみるのもいいんじゃないかな〜と思う。
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