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浅草キッドのOtoのレビュー・感想・評価

浅草キッド(2021年製作の映画)
3.8
「お約束」の笑いのエモさ。吉本騒動があったときのインタビューでボケ倒すゆりあんや、ZOOM事件の後の霜降りラジオが話題になったの思い出したけど、窮地でこそ笑いを追求する芸人の美学ってすごくいいなと思うし、劇団ひとりだから描けたことだと思う。

好きな芸人さんが「失礼なボケをしてキレてくる先輩は面白くない。どんな場面でも笑いを優先する人でいたい」と言ってたけど、手のいじりはまさにそれだし、ハイヒールのくだりも胸が熱くなった。濱家さんも実際、借金して後輩に奢ってたと言ってたな…。

少年漫画みたいに、ビートたけしがコツを掴む瞬間がわかりやすく描かれているけど、どの時代でも成功者は破壊と創造をやってきたことがわかるし、訓練と発表が習慣になっていることがわかる。タップダンスやコントのような「芸」が自分にあるのか…。クリエイターも普段から面白くないとなぁと思う。
一方で、その裏でサポートしていた人や、時代の変化によって衰退した人の存在も確か。映画だってもはやメインストリームとは言えないから他人事じゃない。一緒に沈むのではなく、見切りをつけられるかという局面も今後あるのだと思う。

役者がものすごいのは明らかだけど、実際のツービートの漫才はもっとハイテンポだったし、たしかに普段からずっとボケてるし、生で新ネタをやったのも事実らしいし、勝負どころで挑戦をしたいと思った。同じ理系として憧れだ。
本当に尊敬する人にアタックして師事するというのも当たり前だけどすごく難しくて大事なことだと思った。

ストリッパーを無駄に脱がしていないのも好感だけど、過去を美しく描く物語の域は出ていないかなという印象もある。
ラストが現代とのブリッジの機能を果たしているようにも思うけど、プロポジションは結局「たけしと師匠の絆はすごかった…!」ってことだったなぁ。サクセスストーリーとしてはコンパクトで、ドラマの第一話のような感覚だった。

最近芸人さんと飲んだときに聞いた悩みが『火花』と同じくらいのドラマがあって、「好きな芸人にがその人の理想像」って先輩が言ってたけど、非芸人が描く芸人物語に説得力は出るのか?という疑問もある。
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