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Billie ビリーのいののレビュー・感想・評価

Billie ビリー(2019年製作の映画)
4.1
本人の映像や音声に、数多の関係者による証言。この頃よくある数多くのドキュメンタリーのなかでも群を抜いていると感じた。余計なナレで感情を煽ろうとしないのも潔くて良い。そんな小賢しいことしなくても、ビリーの人生そのものが壮絶だから、このドキュメンタリーの姿勢はこれで良いのだと思う。たくさんの関係者、ひとりひとりの人物をわたしは把握できなかったけど、それでも支障なく観ることができた(と思う)。ビリー・ホリデーの死後、彼女について記事を書こうとしたジャーナリスト、リンダ。ビリーとリンダの人生とが重なる瞬間がある。

ビリーが何故ヤク漬けにならざるを得なかったのか。彼女の歌は何故これほどまでに人の心を打つのか。明確な答えは提示されずとも、観ている者はなにかを摑んで感じとるのだ。歌う場面がたくさんあるのも良くて、その映像がぶつ切りされないことも、ビリーへの尊敬の念をあらわしていると受け取った。着飾ったドレスよりも、シンプルなニットのワンピースで、「奇妙な果実」を歌い上げる映像が心に残る。
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