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時の面影のtaruponのレビュー・感想・評価

時の面影(2021年製作の映画)
4.0
映画の題名は、原題に対してなんでこんな邦題に下のかな??と思うこともままあるけれど、この「時の面影」は良いなぁと感じる。(原題は「The Dig」)
サットン・フーというイングランドのアングロサクソン時代の船葬墓発掘について描いた話で、そこには、学位を持たず独学で考古学に身をささげてきたバジル・ブラウンが、土地の所有者エディスの意を受けて、今まで大したものが無いと思われていたところから思いもかけず古い時代の貴重なものを掘り当てる。そしてそれを受けて今までバジルをいい様に使っていた地元の博物館が手のひら返しをしてきたり、世紀の発見だと乗り込んできた大英博物館が手柄をかっさらおうとしたり、そこにバジルやエディスがどう対処していくのかが描かれ、その経緯自体も面白い部分ではあるが、主題はそこではない。

エディス・プリティというこの土地を持つ女性が、自分自身の希望である学問をする機会を周囲の事情により奪われ、介護、夫の死、自分の病気という不遇に見舞われながらも、考古学というものに対する夢を彼女なりに実現し役割を全うしようという気持ち、古代の人々から受け継いだものをいかに継承するのか、残される息子に託す思い等に心打たれる。
また、ある意味エディスの考古学の相棒ともいえるバジルも、独学で様々かつ深い知識を身につけ、コツコツと薄給で発掘現場で経験を重ねた姿には、エディスと同様考古学に対する深い熱意と誇りが感じられる。

この映画から感じられる、そういった悠久の流れに対する敬意とそれに献身する人達への敬意、その中で現実の理不尽さに自分なりに抗おうと努力する人達の姿が、静かに心に染み入るそんな佳作であったと思う。
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