Nasagi

Moral(原題)のNasagiのネタバレレビュー・内容・結末

Moral(原題)(1982年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

フィリピンの映画で、仲良し4人組の女性それぞれの葛藤をえがく
タイトルのMoralの文字にスラッシュ(亀裂)が入っているのが象徴的

マルコスによる開発独裁、カトリック社会の価値観、若者たちの価値観、性と生殖の権利、同性愛、共産ゲリラ

一歩踏み込んでるなとおもったのが、女友達4人組の間にも考え方のズレがあって、相手の悩みを受けとめられず一方的に説教したりすること。彼女自身も家父長的な価値観に違和感があって苦しんでいるのに、中絶をかんがえている友達に口出ししたりしてしまう。

「大人になる」ということと、「大人社会の価値観を受け入れる」こととの違い

監督にとって3部作の1つなんだな。女性映画について自分は多くをしらないけど、欧米でも明確にフェミニストとして映画をつくる人が出てきたのは70年代以降というイメージがある。独裁政権下でこういう作品を世に出すこと自体すごいけど、それ抜きでかんがえても先駆的な1本だったんじゃないかと思う。

True Colors Film Festivalで一連の作品をみておもったけど、やっぱりちがう国のちがう時の、ちがう出来事であってもそこに描かれている問題には共通性がある。
たとえばキリスト教保守派による中絶の禁止は、1980年前後のフィリピンを舞台にした本作『Moral』と、
米トランプ政権と人権派弁護士たちのたたかいを描いたドキュメンタリー『The Fight』とを結びつける。
またその映画でも扱われているトランプ政権下での移民の家族分離政策は、映画『Listen』で告発された、イギリスの強制養子縁組ともかさなる部分がある。

パッと見てだれに罪があるのかわかる問題と、あまりにも複合的すぎてすぐにはどうしたらいいかわからない問題とがある。でも共通しているのは、当事者の意思を無視したパターナリスティックな判断が横行してしまっているということ。
Nasagi

Nasagi