【イタリア版の諸行無常物語】
GUCCIに全く興味がなかったが、一族崩壊の過程は感じ入るところが多かった。物語に期待していたほどの派手さはなかったが、だからこそかえってリアルに思われた。
イタリア訛り英語のレディ・ガガと、端正な優男のアダムドライバーの掛け合いが思ったよりも絵になっていて、やや長丁場な本作を見続けていられる一要素になっていた。
歴史はそこまで長くないが、栄華を極めた者/一族も、壊れる時はなし崩し的にダメになっていくことを示す一つの事例でもあり、観た直後の感想はまさに
「驕れるものも久しからず、ただ春の夜の夢の如し、猛き者も遂には滅びに、ひとえに風の前の塵に同じ」
という平家物語のフレーズだった。
一つ残念だったとすれば、パトリシアの感情の動きが辿りきれなかったこと。最後に一度は愛した彼を暗殺せねばと決意するまでの葛藤があったはず(なかったか?)だが、長尺の割にはこの一連の感情の起伏の描写が飛んでいた気がする。
元来、彼女は口では愛してると言ってたがそんなことはなかったのだ、という見解の表明とも取れるかもしれないが。