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レンブラントは誰の手にのバナバナのレビュー・感想・評価

レンブラントは誰の手に(2019年製作の映画)
3.3
レンブラントの絵を巡るノンフィクションで、大きな話が2点。
ちょっと小さい話が2点の4つのエピソードからなっています。
完全ネタバレ感想なので、観たくない方は飛ばしてください。

 ↓











大きい話の1つ目は、2018年に44年ぶりに新たなレンブラント作品が発見された話。
オランダのヤン・シックス11世という40代くらいの画商が、クリスティーズに出展されていた『オランダ人の若い青年』の絵を「これ、もしかしてレンブラントじゃねえ!?」と唯一人気付いて購入。
どうして気付いたかというと、それもその筈、ヤン・シックス1世はレンブラントの友人であり、パトロンであり、アムステルダム市長もしていた人物で、家にレンブラントが描いた1世の肖像画が飾ってあり、彼はその絵と共に暮らしてきたからだ。
他にも、230枚もの年代物の絵画に囲まれて育った彼の一族は、祖父の代から画商をしており「タッチでレンブラントと分かった」と言っていたけれども、もう感覚で分かったのではないだろうか(もちろん購入後、専門家に検証してもらっている)。

2つ目の目玉は、フランスのロスチャイルド家が税金を支払うために、レンブラントの2枚1組の絵画
『マールテン・ソールマンとオープイェ・コピットの肖像』という、1枚が3m位ありそうな対の夫婦の絵を、1億6000万ユーロ(約200億円)で売りに出したのだ。
レンブラントをたくさん収蔵しているアムステルダム国立美術館が最初に名乗りをあげたが、何分1億6000万ユーロ!
だが、オランダ側は単独購入できる様にと頑張り、ほぼ資金も集めていたのに、フランスの文化大臣がしゃしゃり出てきて政治的駆け引きになってしまい、結局共同購入することになって今後2つの美術館を行ったり来たりする事になってしまったという…。
アムステルダム国立美術館の、当時の館長と絵画部長の悔しそうな顔が印象に残った。

小エピソード1は、スコットランドの公爵10代バックルー公も、レンブラントの『読書する女性』を所有しており、お城の暗い部屋の暖炉の上に飾られていたのだが、位置が高過ぎるので、座りながらもっとゆっくり見られる場所に移動したいと、城の中で場所を衣替えする話。

小エピソード2は、ニューヨークの大金持ちトーマス・カプランが、会社を売った金で絵画収集するのが趣味になり、レンブラント作品も購入し、最初は家で個人所有して満足していたのだが、今は一般の方も楽しめる様にと海外のルーブル美術館に預けている…という、ちょっと良い話。
…の、主に4つのエピソードで構成されています。


バックルー公爵の『読書する女性』は、モデルがお婆さんの暗い絵なので、公爵は
「彼女が顔を上げるのを待っている瞬間があります」
と言っていたが、正直夜観るのは怖いと思った。
まだ下の本の方を見ているからマシだけど、もし目線が合ったりしたらむっちゃ怖いやん!と思ってしまった。

ロスチャイルド男爵の『マールテン・ソールマンとオープイェ・コピットの肖像』というペアの絵は、二人の婚礼を祝って描かれたそうで、『読書する女性』と比べると二人はまだ若く、絵の色合いもくすんでおらず、明るくて素敵な絵です。
共同購入になってしまい、アムステルダム国立美術館側はさぞ不満が残ったでしょうが、取り合えずこの2枚の絵がバラバラに売却されずに済んでよかったです。
やはり対で揃っていることで、倍増して素晴らしい作品になっているので。


そして、ヤン・シックス11世の『オランダ人の若い青年』の絵ですが、『マールテン・ソールマン』(男性の方の絵)や、あの有名な『夜警』に描かれている人物達の同様に、オランダ商人らしく、黒い服に大きな素敵なレースの襟が描かれており、ファッションから見ても当時のオランダ人だとすぐに分かります。

そして、この作品が本当にレンブラントの物かどうか専門家の教授が調査をしていましたが、『マールテン・ソールマン』と『オランダ人の若い青年』を真横に並べて比べたところ、襟のレースの描き方がレンブラントで間違いないと、とうとう教授が断定します。

更にこの教授は、恐るべきことも推察します。
このハンサムな青年の絵は1人ではなく、隣に誰かが立っていたか座っていた可能性があると。
他のレンブラントの絵から推察すると、その横に居た人物は女性で、この青年の妻であったかもしれない。
それを誰かが商売のために、1枚の絵を2枚の絵として、切り取って販売した可能性があるというのです。
あの『夜警』の場合だと、理由は違うが1715年に火縄銃手組合集会所からアムステルダム市役所に移された時に、壁のサイズに合わせるため、上下左右を切り詰められてしまったそうですが、
もしこの絵が、元は若い夫婦の肖像画であったとしたら、商売目的でバラバラに切り離されたとあっては悲し過ぎる。
せっかくオランダ人の画商に見出され、オランダに戻ってきたのだから、もし本当に切り離されているのだとしたら『マールテン・ソールマンとオープイェ・コピットの肖像』の絵の様に、このカップルも隣に並んでいて欲しい。
今後、妻の部分の絵も見つかるとよいのですが…。

ノンフィクションで4つのエピソードが入り混じっているので、今はどれの話なの?と分かり難い部分もありましたが、絵画はこういう夢があるからいいよね、と思いました。
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