Kuuta

アポロンの地獄のKuutaのレビュー・感想・評価

アポロンの地獄(1967年製作の映画)
3.5
短評。奇跡の丘同様「神話=俺」で映画を撮るパゾリーニ。神話は私小説になり得る。

赤ん坊に乳を与える母親の単独ショットで、彼女は赤ん坊とカメラに交互に視線を向ける。メタ視点の提示でありつつ、母親の「分裂した」視線の表現でもある。

カットが妙に短く、細切れな印象を受けた。手持ちとフィックスの使い分けは奇跡の丘と同じく堅実。真面目。

赤ん坊に意思はないが、そのように見せるのがモンタージュの力。国も時代もごちゃ混ぜなBGMの入れ方、数千年を一瞬で越える編集。映画的なギミックが神話を作っている。最初と最後の円環はその最たるものだが、逆に言うと、その間の荒野のあれこれはちょっと退屈。ロケーションや美術、色彩は美しいのだけど。泥くさい殺し合いは楽しかった。
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