OASIS

熱血男児のOASISのレビュー・感想・評価

熱血男児(2006年製作の映画)
3.6
兄貴分を殺されたヤクザが、復讐の為に弟分を連れて復讐相手が居る街へとやって来て、そこで身辺を調査する内に相手の母親と仲良くなっていくという話。

「アジョシ」で有名になったイ・ジョンボム監督のデビュー作。
導入やクライマックスこそバイオレンス色が強いが、田舎町に着いてからはクッパ屋を営む復讐相手の母親や弟分とのゆるいやりとりが始まり、ほんわかとした雰囲気に包まれる変わった映画だった。

主人公は「熱血」と呼べる程何かに熱い様には思えず、ただ「兄貴の仇は弟分がとるべき」というヤクザとしてのルールに縛られているだけの粗暴な男に見えた。
そんな男が相手の母親と関わっていく事で、息子が殺されるという親としての最大の悲劇について考えるのだが、この母親が「怪しい彼女」のおばあさん役だったナ・ムニというのがズルい。
今回は最初から最後まで婆さん役で毒舌ぶりを発揮しているのだけど、もう一人の息子の失踪を知らないまま暮らしつつ、ヤクザの息子が殺されるかもしれない状況であっても気丈に振る舞う姿がハマり過ぎ。
そして本音をポロリと漏らし弱音を吐く姿に母の息子への想いを滲ませる演技も堪らない。

ソル・ギョングの演技の幅の広さは言わずもがなで、特に終盤に見せる歓喜と狂気が入り混じった表情が暴力的なまでに連続する様は見ていてゾクゾクした。
前半の緩い展開もその演技で許せてしまうくらいに。

配達係の娘との恋愛はこの世界には不要な気がして、その浅い恋模様を描くくらいならもっと新人の弟分との舎弟感を演出してくれた方が二人の結末の衝撃度が増したように思う。
退屈な部分はあったが、後半からは復讐劇として盛り上がってくる感じはあるので「アジョシ」の監督の前作として観る意味はあると思います。
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