乙郎さん

帝銀事件 死刑囚の乙郎さんのネタバレレビュー・内容・結末

帝銀事件 死刑囚(1964年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます


 社会は映画監督・熊井啓のデビュー作。1964年公開。
 いわゆる群像劇で、後半は信欣三演じる平沢貞通に焦点が絞られてきますが、基本的にはいかにして真実が明らかになっていくか、そして、そもそも何を持って真実とするのか、ということを観客に叩きつける作品であると思います。
 後半になり、死刑囚の汚名をかぶせられ、誰の目から見ても冤罪であることは確実にもかかわらず淡々と現実を受け入れていく信欣三の姿はひょうひょうとしたユーモアの裏に隠れた悲しみを感じさせます。
 それにしても、この時代の映画って本当に、濃い。全ての役者が命を削って演じているような気がします。終盤になって家族の間の絆を描くほうにいったのは、前半からとうとうと続いてきた硬質な流れをせき止めるようで少々解せなかったのですが、これを観て帝銀事件の真相とは、とか、死刑の是非、冤罪を無くすには、とか色々なテーマが頭に湧き上がってくるような、観客に訴えかける作品です。機会があれば是非。
(当時の日記より転記)
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