幽斎

ザ・マーダー 連続殺人事件の幽斎のレビュー・感想・評価

3.0
本作は劇場映画では無く、テレビ・ムービー。アメリカのペーパービュー局「Lifetime」放映。北米で9400万世帯が視聴する中堅企業だが独自に映画を製作する事で知られる。局の最大の特徴は視聴者を女性に絞って放送する、出演する側は勿論製作も女性が中心と徹底してる。基本的に白人以外を主人公にキャスティングしない。

Lifetime社の多くを請け負うカナダのReel One Entertainment製作。スペシャル・ムービーとして放送され、視聴率の良かったタイトルは、Amazonを中心に海外へも幅広くセールス。基本的に同局のTVムービーは100分が放送枠とされ、本作も87分と時間的にはサクッと観れる。テイストは私の親世代「火曜サスペンス」に近く(多分)、紹介した通り出演者も女性メインと徹底してる。女性中心と言いながら旦那さんもしっかり喰らい付く、それは美女が出るから。

Sam Irvin監督はベテランだが、経歴の割には代表作が無い職業監督。本作と同じ年にAndrea Bogart主演「ウォッチング・ユー」も製作してるが、日本の2時間ドラマと大差ないクオリティ。映画スタジオでは無いペーパービュー局の限界かも。Lifetimeのムービーは、局の特性から言って残忍な殺人シーンが有る訳でも無く、お茶の間で問題無いグロ演出しか出来ない制約が有る。

主演Anna Hutchison、35歳。名前だけ見るとハリウッド・スターっぽいが、レビュー済「キャビン」端役で出演以外はB級専門。Jason-Shane Scottも「スターシップ・トゥルーパーズ2」出演後はパッとしない。投げ遣りな邦題が示す通り、他のReel One作品に較べてもレベルが低い。センスが一時代古いテンプレート演出だが、面倒なのはクレームを付ける程酷くないので、イオンのトップバリューのカップ麺。と言えばお分かり頂けるだろうか"笑"。

ミステリー的に言えばフラグの回収が即実行されるので、分り易いを通り越して馬鹿にしてるのか?と思う位プロットが単調過ぎ。描写に制約が有るので、罪滅ぼしにDario Argento監督をオマージュした演出も見られるが、鮮血が出る訳ないので、あっさり死んで逝く被害者など、人の命が軽く見える特異な作品。犯人に繋がる伏線が全く機能せず、唐突に解決する展開には失笑を禁じえない。これを観ると東映製作の科捜研とか相棒のクオリティは凄い、これでは暇潰しにも値しない。

唯一良いなと思ったのはプロダクションデザインと衣装。ショップチャンネルに出て来そうな衣装の数々に、サロンのインテリアが何気に男が見ても素敵で目の保養に成った。人が次々と死んで逝く作品だけど、妙に癒された。冒頭の赤いマセラティ、カッコ良かった"笑"。

私が書いた短編の方が遥かに面白い。リタイアしたら、もう一度ミステリー書こうかな。
幽斎

幽斎