Nちゃん

フレンチ・イグジット さよならは言わずにのNちゃんのレビュー・感想・評価

3.4
マンハッタンに住む60歳のフランシスは、12年前に他界した夫の遺産で優雅な暮らしを送っていた。
彼女は全ての遺産を使い果たす前に自分は死んでしまうだろうと考えていたが、計画通りにはいかず、既にお金が底を尽きかけていることを知る。
そこで彼女は家財道具を売り払い、息子マルコムと猫のフランクを連れてパリへ移住するが……。


最初の出だしは掴みようのない感じでどんな物語なのか先が全然読めなくて面白くなるのか少し不安な気持ちだったけど、お金が底を尽きてきて息子を連れてパリに向かう船の中からようやく話が進み出す。

フランシスはお金が尽きようともお金持ちの風格は一切落ちず、お金使いもお金持ち波に豪快でホームレスのことをホームレスだと思わずに手を差し出せる余裕があるくらい芯が強くはっきりした女性です。
そんな母フランシスと息子マルコムの関係性が不思議なくらい絶妙で、一見母のことを突き放しそうな息子なのに一緒にパリ行きに着いてくるしとにかくいつも母親の味方で良い子ちゃんなマルコムだけど、幼い頃なかなか学校に迎えに来なかった母親との出来事をきっかけに、そこから母親とマルコムの関係性が出来上がってて、そのストーリーが冒頭とラストで描かれていてこの親子がここまでの関係性を築けている馴れ初めが明らかになっています。
このシーンを見て初めてこの親子の愛の形が分かりますよね。

船の中で出会う魔女や飼っている猫の正体、夫の死、夫の死の真相とフランシスの死との向き合い方、全て繋がっていて、物語全体を見るとすごい不思議な感じで、夢を見ているかのようなフワフワした感覚の中にしっかりとした現実があって、雲の中を確かな糸に導かれるようにその方向に向かっていくかのような、そんな物語です。
スッと心に入っていく不思議な感覚のお話でした。

なんだかんだフランシスは恵まれた人たちに囲まれています。
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