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白い牛のバラッドの磨のレビュー・感想・評価

白い牛のバラッド(2020年製作の映画)
3.7
死刑執行数が世界2位(1位は当然…ね)のイランを舞台に、冤罪の死刑で愛する夫を失ったシングルマザーと聾唖の娘の物語。
イラン・イスラム共和国における厳罰的な法制度を背景に描かれるサスペンス作品。

本作はスカッとする復讐ものでもミステリー作品でもなく、不条理な社会やイスラムの女性蔑視に大きくフォーカスを当てた作品となっている。

ベルリン国際映画祭での各賞ノミネートや批評家の評判もかなり良いが、残念ながら本国イランでは政府の検閲により僅か3回のみの上映で中止になったそう。
監督であり主演のマリヤム・モガッタム、上記の件も鑑みるに、おそらく身の危険も覚悟のうえで社会のタブーに切り込んだと思う。見事な脚本と渾身の演技は尊敬に値するほどのモノだった。

日本映画のように間や余白を感じる部分がある。そこから伝わる心理描写は強烈で、物語にグッと惹き込まれる100分超は監督の手腕が大きいと思う。各所に散らばる“牛”の使い方もお見事。

あまりに重いし、ある程度イラン(イスラム教)の事を知っておいた方が良さそうなので万人にオススメは出来ないけど、興味のある方には観てもらいたい作品です。


死刑制度の是非は別として、イランの厳しい刑罰はハンムラビ経典などの同害報復の精神が基になっているのかな?とも思った。
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