ゆたり

ボーはおそれているのゆたりのネタバレレビュー・内容・結末

ボーはおそれている(2023年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

あえてジャンル分けをするんなら、ナイトメア・アドベンチャー・コメディ・帰省RPG・セラピーMOVIEかなぁ〜〜〜〜〜〜〜?????????

正に「アリ・アスターの贓物プールを泳がされている」ような感覚でしたね
息継ぎ無しで
でもそれをぼくは望んでいました
アリ・アスターに失礼かもしれないけど、現時点での「アリ・アスターの全部」って印象を受けました

私小説ですか?ですよね
既存作品も私的だったであろうけど、それらをゆうに超えるくらいに私的ですよね

美術と音響とホアキン(他皆々様)の素晴らしさは言わずもがな

「これはコメディです」と仰っていたのが、よくわかるな
いや笑えないんだけどね
いやめちゃくちゃ面白いんだけどね
1回純然たるコメディ作ってほしいな
不条理でシュール
ごっつええ感じです

観るスタンス激ムズでした〜
初見じゃあピントが定まらないね(2回目も合わせられるか知らんが)
とりあえず今までのアリ・アスター作品とは提供のカタチが違う感じがしましたね
「何処からが空想で何が現実で」とかっていう視点とは違う次元にある作品なのかな、って
(そこを考えるのも楽しいけど)

ヘレディタリーでもそうやけど、屋根裏に何ぞトラウマでもあるんか
あとミッドサマーにもある三角形
どちらも畏怖の象徴なのかな
幼い頃、親の癇に障ることをしてしまったら、真っ暗な三角形の屋根裏に閉じ込められたりしちゃったのかな

まぁやっぱり、母親ね
マザーフッドですか
愛情か、支配か、母性と執着
非常にぼく個人的なものとリンクしててたまりませんね。痺れましたわ。
罪悪感、贖罪、許されたい気持ち、足りない愛、愛せない気持ち、愛したい気持ち、そこにやっぱり罪悪感、自責の念、自己を肯定できない感覚、そこから生じる優しさは優しさなのか、欠損している自己決定、その選択は本当に自分の意思か

ママのモザイクアートポスター
最近話題のアナ雪モザイクアートもどきと同じ作り方でちょっと笑っちゃった

ボーの兄弟っぽいあの子は、ボーの中にある一面だったのかな
自分の勇敢さ、正直さを出してしまうと、怖いから、面倒だから、閉じ込めちゃったのかな
そこと向き合うと、きっと怖いから、面倒だから、自分の選択に見せかけた他責として処理できる都合のいい選択に委ねていってしまうのかな

アリ・アスター作品通して感じることだけど、やっぱり宗教に対する冷笑、というか冷ややかな見方?というのを改めて感じましたね
ある種そこは自分の人間性への誠実さだとぼくは思います。でも裏を返せば罪悪感の強さか。

序盤の、世にある様々な地獄をギュッと詰め込んだような世界な〜
地獄は全体通してか
なんか、世界に今ある気色悪さがたくさん見れた気がします

トゥルーマンショー的なラストの裁判?シーン、非常に観念的で、ラース・フォン・トリアーの「ハウス・ジャック・ビルト」のラストシーンみたいな表現だなって感じました
このシーン、私的には自分VS母親、というよりは自分VS自分という感じがしました。
言い訳をしたい自分(それが事実であれ)と、その言い訳を良しとしない自分、そのジレンマに苛まれた果てはもうドギャンとなるしかないわな。
自分を成立させる為に自己否定と自己肯定の繰り返し。自分の不健全さは解っているけど、その生き方しか知らないのよ。


じっくりコトコト煮込みまくった超絶濃厚アリ・アスター汁、消化するには相当タフな消化器官と脳が必要でしょうな!


“満たされない空虚な人生”

己が抱えている地獄を、映画作品として表現できる人間がいること、それを観られるということに感謝します。
ゆたり

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