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ボーはおそれているのinazumaのネタバレレビュー・内容・結末

ボーはおそれている(2023年製作の映画)
4.6

このレビューはネタバレを含みます

とても良いとはいえないテンポ、長ゼリフの押収、3時間にわたる上映時間…
『ヘレディタリー/継承』『ミッドサマー』と比較すると体感時間がめちゃくちゃ長い。。だけど不思議と全然"苦"には感じなかったです。最初から最後までアリ・アスターの作家性が途切れることなく爆発していたからでしょう。。

この監督の大好きなところはあらゆるシーンに仕掛けを散りばめているところ。正直それらは個人的な好き嫌いがありますが、この異常なサービス精神には"映画に求めている楽しさ"の詰め合わせみたいな印象を受けます。特に印象的だったのは冒頭から既にボーの運命を暗示していた"おもちゃのボート"。ボーがセラピーから帰る途中にチラッと映る、水たまりにおもちゃのボートを浮かせて遊んでいる子供の姿。そこに、その子の母親と思われる女性が現れ「遊ぶな」と子供の手を引き、その反動でボートはひっくり返る。親の支配によって逆さまになるボートはまさにラストそのまんま。ボーが見る世界はすべてモナの支配下にあるともとれますが、タイトル前のイヤすぎる出産シーンがあることで、単にボーの脳が幻想的な情景を映し出しているともとれるし、ボーが実は出産時に死亡したことで怒りと悲しみに暮れるモナの妄想そのものであるともとれる。とても頭が忙しくなる映画です。。複数回見るとより楽しめるのでしょうが、ちょっとしばらくは距離を置きたいかも。。
ところで本作はアリ・アスターの「自伝的」な作品かと思ってみてたのですが、パンフみるとギリシャ神話から着想を得たみたいなこと書いてて、何ともいえない気持ちになりました。実体験として家族や初恋にトラウマを抱き、それを作品に反映しているものだと思っていたもので。単純に「こんなことあったら、嫌だな…」という思いからこれまでの強烈な作品を生み出してるのであれば、この監督の頭は相当○ッちゃってますね😱

首なし死体や、人物が固定されたまま一瞬にして昼間から夜に変わるとことか、見ただけでアリ・アスターだと分かる演出も目白押しで良し。ちょっと気になったのは、せっかくホアキン・フェニックスが熱演しているのに、相手が長いセリフ喋ってるときに「待ち状態」になってしまってる(ように見える)ところが時々あったこと。いろんな要素詰め込みまくってさすがに演出にも疲れがきたのか!?
しかしホアキンのあの顔面は素晴らしく芸術的で、3時間ほぼずっと映ってるから目の保養にもなったしお腹もいっぱいです。ボーの少年時代を演じたアーメン・ナハペティアンもクセの強そうな濃~い良い顔してましたね!よく見つけてきた。ただ正直、顔面コンテストしたらセラピストのオッサンが優勝ですかね。特に笑顔…胸糞悪いし生理的にイヤだけど、ちょっとキュートにも感じるという絶妙な顔面でした。
次回作もホアキン主演だそうで!いつになるか分かりませんがまた楽しみが増えた!大いに期待!

📖パンフレットの感想📖
内容もさることながら、一番目を引くのはポラロイド写真や毒グモ注意のチラシなど劇中登場した意味深なアイテムがくっ付いてるところ!これぞまさに"記念品"ですね。こういう、映画を観終わった後も映画の世界を体感できる作りは、パンフレットの鑑だと思います!
買いです!
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