nori8

茜色に焼かれるのnori8のレビュー・感想・評価

茜色に焼かれる(2021年製作の映画)
3.8
尾野真千子、覚醒。

理不尽な交通事故で夫を亡くし
社会的弱者となった
シングルマザー。

弱きものがさらに追い詰められ
金と欲に絡め取られる負の連鎖。
コロナ禍の今、顕在化する
社会の無常をこれでもかと
露骨に描き出す。

絶望の淵からあふれ出るのは
涙ではなく、乾いた笑い。
「まぁ、頑張りましょ…」
口癖のように出る励ましの言葉が
虚しく響く。

監督が訴えたかったのは
ただ、弱者の悲しい現実ではなく
おそらく、不都合にフタをして
見て見ぬふりをする偽善者への
怒りと憤り。

尾野真千子の息子役の和田庵くん
そして、風俗で知り合い
不条理な苦しみを分かち合う
片山友希のリアルな芝居が出色。

ラストのファンタジー落ちは
石井裕也監督ならではの
優しきレクイエムか。

痛くて、やるせなくて
でも温かい…
今だからこそ見るべき作品。
nori8

nori8