尾野真千子、覚醒。
理不尽な交通事故で夫を亡くし
社会的弱者となった
シングルマザー。
弱きものがさらに追い詰められ
金と欲に絡め取られる負の連鎖。
コロナ禍の今、顕在化する
社会の無常をこれでもかと
露骨に描き出す。
絶望の淵からあふれ出るのは
涙ではなく、乾いた笑い。
「まぁ、頑張りましょ…」
口癖のように出る励ましの言葉が
虚しく響く。
監督が訴えたかったのは
ただ、弱者の悲しい現実ではなく
おそらく、不都合にフタをして
見て見ぬふりをする偽善者への
怒りと憤り。
尾野真千子の息子役の和田庵くん
そして、風俗で知り合い
不条理な苦しみを分かち合う
片山友希のリアルな芝居が出色。
ラストのファンタジー落ちは
石井裕也監督ならではの
優しきレクイエムか。
痛くて、やるせなくて
でも温かい…
今だからこそ見るべき作品。