ブルームーン男爵

ココ・シャネル 時代と闘った女のブルームーン男爵のレビュー・感想・評価

3.4
55分と手短なドキュメンタリーで、深みや斬新な切り口の作品ではないが、コンパクトに彼女の人生がまとめてある。

シャネルをドラマチックに描く作品が多いが、本作は香水を巡る戦いや、対戦中のドイツへの協力などシビアな現実的な話が多い。サガンが、シャネルについて辛辣に語っているのが印象的だった。本作が取り上げる現実的なエピソードの数々がシャネルの持つ一種の神話性を解体している。

しかし、シャネルは時代のうねりと様々な手段で戦い、抗い、生き残ったからこそアイコンになり得たのだ。ドキュメンタリーで感じるのはどこまでも感じるシャネルの強さである(そして生き残る難しさである)。本作はシャネルの戦いをあまりにあからさまに描く。しかし、今日のシャネルの成功を観れば、粘り強さと困難、苦悩こそ人を強くするのだと教えてくれるだろう。

ただ淡々とした早足のドキュメンタリーで若干眠くなってしまったのも事実である。ストーリー性がなく事実の羅列は人を魅了しないのだ。ブランドのアイコンとしてシャネルのイメージを留めておきたい人にはおすすめしない。しかし、何があろうとシャネルがファッション史に起こした革命は色褪せることはない。