MASH

ノーカントリーのMASHのレビュー・感想・評価

ノーカントリー(2007年製作の映画)
5.0
コーエン兄弟の最高傑作と言っても過言ではない。だが、コーエン兄弟の中でも一番難解な作品の一つでもあるだろう。人の業やカルマを描きながらも、その人の行いとは関係なく襲ってくる悪意。それぞれのキャラが何かの象徴なのかなと思って観ていたが、結局はシガーも含めて皆その暴力という存在からは逃げることができない人間だったのかも。

残虐な暴力に包まれていくアメリカという国に絶望する保安官。だが、その暴力の根源のような存在であったシガーも自分も一人の人間であった気付いたとき、自らもまた暴力の渦に巻き込まれていく。金や麻薬、そして人という枠を超えた存在がそこにはあったのだろう。だが、最後にシガーにシャツを渡す少年の姿からは、暴力に満ちた世界に残された善意のようなものを感じられるのだ。

乾いたテキサスの風景と一切音楽のない中での繰り広げられる巧みな会話劇と逃走劇。素晴らしいサスペンス・スリラーでありながら、そこには暴力に染まり切った世界への絶望と残された希望が描かれているのだ。
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