ベビーパウダー山崎

猟銃のベビーパウダー山崎のレビュー・感想・評価

猟銃(1961年製作の映画)
3.0
うぶな少女からすれっからしの女へとあっという間に変化する岡田茉莉子がやはり良い。表と裏、どちらも演じきれる巧みな役者。
悪人になれない善人というより弱い四人が、決意と問題を先送りしてきた挙げ句の死、絶望。猟銃を一発でも放つ強さがあったならば、もう少しマシな未来が用意されていたのではないか。
少人数の室内プレイ。閉じて完結している世界。預けられた娘は、その関係性を腐らす呪い。病に侵された心音のような不穏な音楽が抜群。病室から見える奇怪な色の煙を吐き出す煙突は想像力を掻き立てられる。
庶民と同じ目線で映画を撮ってきた五所平、年を重ねるたびに段々とその視点が離れていき、俯瞰し、その無意味な人生を達観していく。メロドラマではあるが、大袈裟な感情表現は描かれない。みなひっそりと哀しんだりイラついたりしている。それはつまり、もっとも深いのは「やりきれなさ」で、どうすることもできない現実に打ちのめされるのみ。