てっぺい

コーダ あいのうたのてっぺいのレビュー・感想・評価

コーダ あいのうた(2021年製作の映画)
5.0
【うたで泣ける映画】
耳の聞こえない家族と暮らす娘。天賦の才を与えられた歌の道と、家族に捧げ続ける道に迷った時、彼女が大舞台で歌い上げる“あいのうた”に施したある演出に涙腺崩壊。家族愛に満ち溢れた幸せな作品。

◆トリビア
○サンダンス映画祭(ロバート・レッドフォード創設)で、史上最多4冠に輝き、サンダンス映画祭史上最高額約26億円で配給権が落札された。(https://gaga.ne.jp/coda/)
〇劇中で伸びやかな歌声を披露している、主人公を演じたエミリアは、歌のレッスンを受けたのは、今回が初めて。(https://news.yahoo.co.jp/articles/a48b0e161add3101a65a9f7cd27e596346985de1)
〇タイトルにある“CODA”は、Children of Deaf Adults=“耳の聴こえない両親に育てられた子ども”の意味であり、音楽用語としても、楽曲や楽章の締めを表す=新たな章の始まりの意味もある。(https://news.yahoo.co.jp/articles/a48b0e161add3101a65a9f7cd27e596346985de1)
○ 監督は聴者スターのキャスティングを要請されたが、主人公の家族は絶対にろう者が演じるべきだと訴え続け、ろう者を採用、手話監督も登用した。(https://gendai.ismedia.jp/articles/-/91641?page=4)
〇監督の両親は移民で、米国で生まれた子どもである自分と両親に文化的な違いがある意味で、主人公と共通する部分があった。(https://mainichi.jp/premier/health/articles/20220118/med/00m/100/012000c)
○ ろう者はドアに背を向けて座らない。ドアの音が聞こえないため、誰が入って来たかすぐ分かるようにドアのほうを向いた家具の配置にする。など、細かい設定も徹底している。(https://gendai.ismedia.jp/articles/-/91641?page=2)

◆概要
フランス映画「エール!」('14)のリメイク。第79回ゴールデングローブ賞ドラマ映画賞、映画助演男優賞ノミネート作品。
【監督】
「タルーラ 彼女たちの事情」シアン・ヘダー
【出演】
「ロック&キー」エミリア・ジョーンズ
『シング・ストリート 未来へのうた』フェルディア・ウォルシュ=ピーロ
「愛は静けさの中に」マーリー・マトリン
(マーリー含め、実際に聴覚障害を持つ俳優たちがルビーの家族を演じる)
【公開】2022年1月21日
【上映時間】111分

◆ストーリー
家族の中で1人だけ耳が聞こえる高校生のルビーは、幼い頃から家族の耳となり、家業の漁業も毎日欠かさず手伝っていた。新学期、合唱クラブに入部したルビーの歌の才能に気づいた顧問の先生は、都会の名門音楽大学の受験を強く勧めるが、 家業の方が大事だと大反対する両親に、ルビーは自分の夢よりも家族の助けを続けることを決意するが……。

◆関連作品
○「エール!」(本作の原作であるフランス映画)
○『サウンド・オブ・メタル~聞こえるということ~』(難聴に陥るメタルバンドドラマーの話)
○「ワンダー 君は太陽」(顔に障がいのある男の子とその家族愛)
○『クワイエット・プレイス』シリーズ(ろう者出演のサイレントホラー)


◆以下ネタバレ


◆あいのうた
家族に“人生を捧げてきた”ルビー。そして、自分の新しい道を見つけても、家族を取ることを決めた彼女。“失せろ”と兄なりの言葉で送ろうとするレオ。健聴の娘との距離を案じながら、子離れもできないけど1番娘思いの母。娘を認め、その声を“手”で感じ取り、最後にその背中を押してあげた家族思いの父。そんな家族の前で、そして心で歌う事を教えてくれたV先生の伴奏もついて、完全に自然体でルビーが歌った「Both Sides Now(青春の光と影)」。家族に届けるように、感謝を伝えるように手話をつけて、伸び伸びとまさに“あいのうた”を歌うルビーに完全に涙腺が崩壊した。

◆家族
“家族は仲良く”がモットーの父。家族ぐるみでマッチングアプリをしているのも微笑ましかったし、いつも笑顔で温かい、マイルズも羨むロッシ家族。2週間の禁欲も我慢できず、来客中の部屋の隣でおっ始めてしまうのには大爆笑だったし、そのマイルズに真っ先に避妊を説く夫婦笑。笑わせながら、でも仲良しなあの夫婦像がとても素敵だった。

◆手話ジョーク
そんな2人の下ネタジョークもさることながら、ルビーが友達に仕込んだ“私ヘルペスなの”の下ネタ手話。そしてV先生が発した“ファックできて光栄です”。手話ならではの間違いを下ネタに落とし込んで軽く笑わせてくれる映画のテンションがいい。ラストカットでルビーが見せた、中指と人差し指をクロスし小指を立てる手話の意味も気になった。(きっととても前向きな意味なのだと思う)

◆演出
説明が難しいと言葉をためらったルビーに、V先生が再度促したあと、ルビーが絞り出した感情は言葉でなく手話。そこには字幕も乗らず、声も出なかったからこそ、逆にCODAとして生きてきたルビーの心の中に引き込まれるような、ぐっとくる演出だった。また、発表会で父親が観客を見渡し音が消えるシーン。夕食の会話すらしてしまう注意散漫さで、ルビーの歌声に無頓着だった父が、初めてその魅力に気づき始める、その心の内に入り込むようで、こちらもグッと引き込まれた。それが“手”でルビーの声を感じ取るシーンの感動にも繋がったし、ラストで“行け”と全編を通して唯一声を発した、父の娘への理解がとても伝わってきた。

引用元
https://eiga.com/movie/96041/
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