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ゆるキャン△のRickのレビュー・感想・評価

ゆるキャン△(2022年製作の映画)
4.1
 学生時代にできない事は、たくさんある。欲しいものは小遣いの範囲でちょっとずつ、行ける場所も、そこまでの足がないから限られる。県外に行くのも大冒険だ。その分、自分で仕事をしてお金を稼ぐようになると、ぐんとそれまでの生活とは変わってくる。買えるものは増え、行ける場所も、できる事だって増えていく。ちょっとした全能感を感じる事だってあるだろう。でも、だからと言って、全てが意のままになるわけではない。当たり前のことだけれども。しなければならないこと、責任、もっと別のこと、周りの世界との繋がりの中で、諦めなければならない事情が出てくる場合だってある。大人だってそんなに上手く行けるわけじゃない。ただ一つ、大人になって変わる事は、知識と経験が桁違いにあることだ。工夫と働き方次第で、学生時代よりももっと遠くまできっと行けるはずだ。
 今作ではTVシリーズよりも、ちょっと先の未来を描いている。ぬるま湯と揶揄されがちな日常系というジャンルにおいて、個を尊重し、学校の枠を飛び出した『ゆるキャン△』という作品にしかできない凄みを感じる。通底する緩さは変わらず、けれどもシビアなところはとことんシビアに。お金と人員の話がオミットされている点に関してはちょっと気になるけれども、それでも良い作品を見たと思える。それがゆるキャンの力だ。
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