木陰

シン・仮面ライダーの木陰のネタバレレビュー・内容・結末

シン・仮面ライダー(2023年製作の映画)
3.4

このレビューはネタバレを含みます


「ルリ子を頼む」という緑川先生の最後の言葉、それは本郷猛への信頼だった。その言葉を約束と捉え、本郷猛はショッカーと戦うことを選ぶ。ルリ子が死んだ後は彼女の願いを引き継ぎ、やはり戦い続けることを選ぶ。他人の思いを受け継いで生きる本郷猛の最後の清々しき顔よ。

仮面ライダーという存在は、赤いマフラーと仮面によって他人に縛られ生き続けるものなのではないか。それは全く悪いものではなく、信じたり信じられたりして誰かの思いを受け継いで、そうやって生きていけるのが人間という生き物なのかもしれない。映画を観ながらそういうことを考えていた。

一文字隼人もショッカーの洗脳を解かれてすぐ、ルリ子に赤いマフラーを巻かれる。
バッタオーグとして生きることから、仮面ライダーとして生きていくことになる。それも等しく呪いや洗脳のようなもので、彼は赤いマフラーに縛られてしまったのだと思う。

本郷猛も一文字隼人も、ルリ子に赤いマフラーを巻かれたことをきっかけに仮面ライダーとして生きることを選ぶ。「マフラー似合ってたよ」その言葉は仮面ライダーである二人をこれからも仮面ライダーとして縛り続け、そして生かしていく。

「群れるのは嫌いだ、一人がいい」と言っていた一文字隼人は、本郷とルリ子の思いが宿ったマスクを受け取り、仮面ライダーとして生きていく決意をして「スッキリした」と言った。誰かの気持ちを受け継いで生きることはもしかしたら一人で生きるのよりずっと楽なのかもしれない、そしてそんな自分を選んで初めて、自分の生き方を愛せるようになるのかもしれない。それが人間という生き物、人間らしさなのかもしれない。


カメラの撮り方がとても多彩だった。殴られる相手の目線のショットや閉められる車のドアからのショット、迫力があって楽しかった。

特に顔を画面いっぱいに撮るカット、役者の表情の演技を信頼していないと出来ないことだなと思う。その役者とスクリーン越しに目が合うこと。言葉が向けられるのではなく、目が合うこと。それは視覚的な表現でしかなし得ない、映像の強みを存分に発揮していた、すごいと思った。

ウルトラマンは光の巨人だけど、仮面ライダーは影の戦士だった。暗闇の中に浮かび上がる仮面ライダーの赤、格好良すぎてにやけが止まらなかった。
木陰

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