緑雨

ひまわりの緑雨のレビュー・感想・評価

ひまわり(1970年製作の映画)
4.0
15年ぶりに再見し、この映画を悲恋についての映画だと思って観ると本質を見誤ると感じた。戦争という要素が思った以上に重きを占めている。タイトルは「ひまわり」、そしてあの一面のひまわり畑の下に何が埋まっているかを考えれば当然なのだが。
戦争に人生を狂わされ、それでも力強く生きているソフィア・ローレンの生き様こそが主題なのだ。以前に観たときも、終盤のマストロヤンニのヘタレぶりに違和感を覚えたのだが、その女々しさと対比することでローレンの強さを際立たせることに意味があるのだと思う。

ローレンが、ロシアでマストロヤンニの居所に辿り着く場面の緊張感と切なさの演出は尋常でない。リュドミラ・サベリーエワに導かれて鉄道駅に向かい、家の前のぬかるんだ道を少し距離を置いて歩く二人の姿を少し引きの画でパンで捉えるシーンがとても印象的。
そう、この映画、カメラが実にダイナミックに動くのだ。ちょっとズームを多用しすぎかなとは思うが、例えばミラノの駅のベンチでローレンが帰還兵と話す場面、ロシアで広大な墓地にたたずむ場面。マストロヤンニ一家の引っ越しの場面では、なんと走っているトラックの周りを回りながらカメラが前を横切る。あれはいったいどうやって撮ったのだろう?
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