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セールスマンのべーすべーすのレビュー・感想・評価

セールスマン(1969年製作の映画)
4.2
昨年の12月でしたが現代アートハウス入門ネオクラシックをめぐる七夜Vol.2にて、日本初公開だったセールスマン鑑賞。

企画が面白くてマニアックな名作を、現役の映像作家、映画監督の方々のティーチインをしてより作品の理解を深めていく贅沢な時間。全国のミニシアターでライブ配信などを駆使して解説中継してくれるのです。学生の頃にこんな企画があったら通い詰めていた事でしょうし、ちょっとでも興味のある方は是非足を運んでみると新しい発見に繋がるかもしれません。

本作セールスマンはとてもシンプルで1960年代後半のアメリカ。聖書を訪問販売で売り歩くセールスマンの旅を追ったドキュメンタリー。
聖書という神聖なるモノ。
世界で1番売れている本。
しかし、裕福な家庭ばかりではない時勢や地域に"高価で美しい聖書"をかなりわらけてくるぐらい強引な営業方法で販売していく中で、みている人に資本主義の本質とモラル、信仰に対する疑問を抱かせる作品。ドキュメンタリー作品なのですが、編集が上手く物語調になっていて音楽やナレーションなど無くそれでいておもしろい。いろんな一般的家庭に訪問して居るんですがどうやって撮影できたのかと思うくらい自然な視点で自然な位置にカメラが置かれているのです。テレ東かと思いました。🤣

ティーチインには映像作家の想田和弘監督がいらっしゃってました。ドキュメンタリーは疎いのですが、「選挙」や「精神0」などを制作された方。ダイレクトシネマについてや、ドキュメンタリー映画の原罪についてなどを解説していただきました。
ドキュメンタリーはカメラが入る事で、意味が生まれてくる。その中でドキュメンタリーと作り物との間の揺らぎが作品の魅力に繋がっていく。しかし、ドキュメンタリーを行う事で誰かが苦しみ傷つく可能性もある。
don't go too far 行きすぎない、やり過ぎないところにドキュメンタリーの意義がある。
そういうことを踏まえながら今度からドキュメンタリー映画も見ていきたいと思える作品でした。