このレビューはネタバレを含みます
荒々しく感情を揺さぶられるわけではないけれど、その静けさにこそ涙が止まらない。そんな作品でした。
亡くなった同性パートナーの母と子供の面倒を見ている主人公が、善意と正義感、そして少しばかりの欲にその運命を変えられ、抗いようもなくなってしまう。
台湾語を話す義母(主人公がずっと他人行儀におばさん阿姨と呼んでいるところが……家事をして生活費も出しているのに……)、自分が母を奪ったも同然の愛する人の息子。だけど、血の繋がりがなくてもそこにあるのが掛け値なしの愛情だとどうして理解してもらえないんだろう?
基隆の港町、主人公たちの家から見える港の風景の穏やかさと静かな音楽、主演のモー・ズーイーの静かながらに感情が溢れ出しそうな演技。語りすぎないところも素晴らしかったです。
願わくばまたいつか、を心から信じたくなる作品でした。