今泉力哉監督作品。ついこの間も新作を観たのにまた新作が観られるとは。そしてこちらもまた、良い映画だった。
父親とのふたり暮らしが突然終わった陽に、突然できた「お姉ちゃん」という新たな役割。小さな怪獣相手に手を焼きながらも、ちゃんとお姉ちゃんをこなす陽は、“良い子”なんだと思う。この陽が所謂“良い子”なことへの甘えが、陽を早く大人にしてしまったんじゃないかなと思った。友達との会話を途中で切り上げて家事をこなしていた陽と同じく、スカートに付いていたカピカピのご飯粒を恥ずかしく思う陽のことも、父親には知っておいて欲しかったなぁ。
この映画、陽が主人公かと思っていたら、途中で陽から陸へバトンタッチするような展開に流れたのが意外だった。でも、陽がもがいたことの答えが陸へと連鎖し、陸には陸の悩みがあって、もがきがあって、そして成長があるという淡い繋がりは良かったなと思う。
濡れると透明になるというサンカヨウの花。可憐な繊細さが感じられるその花の開花時間は短く、見頃も生息場所も限定的らしい。涙を流して傷付いて、少し強くなって少し成長する陽や陸たちを、サンカヨウに例えた優しい映画だった。
#125_2021