しゃび

かそけきサンカヨウのしゃびのレビュー・感想・評価

かそけきサンカヨウ(2021年製作の映画)
3.0
「ひとつ目の方は恋愛って感じがして」
「ふたつ目の方は友情って感じがした」


同じものを見ていても、音や心境、環境の違いで受け取り方が変わる。


見ているものは全て、
「のように見える」だけなのだ。


自分が空っぽだと感じれば、人が満たされているように映る。
自分が浮かばれていないと感じれば、人が順風満帆に映る。


大事なのは「見えているだけ」と知ること。そして、ちゃんと話をすることなのだと思う。


「ひとそれぞれ」だと関心の外においやるのではなく「そうに違いない」と断じるのでもなく。決して交わることのない互いの溝を、少しづつ埋めていくことに、生きる醍醐味があるのだと教えられた気がした。





『パンとバスと2度目のハツコイ』『愛がなんだ』と同じく、人が説明的に描かれてる印象が強い。
下北沢という場を描いた『街の上で』では豊かに見えた人間模様が、人間を描こうとした途端窮屈に見えてしまうのは不思議だ。

『街の上で』の長回しの会話シーンが好きで何度も見直した。観ていてワクワクした。しかし、本作の長回しは途中で飽きてきてしまった。話にフォーカスしすぎていたからだ。

人間は多面的な生き物だ。
しかし説明しようとすると単面的になる。


「のように見える」を描きながら、
観客に「のように見る自由」を与えていないように感じた。
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