グラビティボルト

ベネデッタのグラビティボルトのレビュー・感想・評価

ベネデッタ(2021年製作の映画)
3.7
初っ端から鳥の糞が顔にかかり、次は厠で屁をこく女優でやりたい放題。
でも、ニヒルな手触りはあっても忌々しい下品さには至らない。

撮影については特に言いたくなる事はないんだけど、最後まで彼女の身体に刻まれた「聖痕」の真実を明かさず、徹底してその瞬間をボカす編集が前半は強い。
明らかな奇跡はファーストシーケンスの鳥の糞と倒れてきた聖母像の乳首を吸う場面の2つのみという徹底振り。

キリストという偶像の意思のままに
働くのが神父やシスターな訳だけど、彼、彼女らの語る「神の御意志」は、部下から質問が出来ない上司のようなもので、具体的な確認が全く出来ないので全てが胡散臭く、宙釣りになるのが面白かった。

こんだけ色々やっていて、学術的な方面からの批評に耐えうるのに、「主演女優の胸がデカイ」という節操ない感想が浮かんでくる途方もない明け透けさも凄い。
自ら胸を揉ませるという動作が、ある種の信頼や愛の証として映る終盤のやり取りも見事。
あの、女優二人の横顔を行き来して最終的に両者を切断するパンフォーカス、あの二人のドラマの終結のショットとしてこれ以上ないもので、
確かに、木製の聖母像をディルドにするようなどうしようもない二人だったけど、ちゃんと恋愛関係だったとあの乳房を晒しながら喚き散らすバルトロメアと振り向かずに去っていくベネデッタの画で確信出来るの、もう作家の腕力でねじ伏せられたようだった。