グラビティボルト

こちらあみ子のグラビティボルトのレビュー・感想・評価

こちらあみ子(2022年製作の映画)
3.9
相米慎二の映画を感じさせる傑作。
これもまた、子供の挙動に対してどうする事も出来ない大人の映画だった。
子供の自由さ、溌剌さ、純粋さが全く彼女らを幸せにしない語りの徹底ぶりと、暴力の予感を帯びてしまう井浦新演じる親父の佇まいをただ観てる事しか出来ない。

冒頭、チャイムが鳴ると同時に扉から飛び出す児童を捉えたロングショットのウェス・アンダーソン的な統御された画面から、
子役の身体の躍動、発声の強烈さに賭けたような場面もあるし、まさかの「幽霊」を使ったファンタジックな画面も設計していて、とにかく手数が多い。

これらの手数が単なる技巧ではなく、あみ子の生きる世界の
「摩訶不思議さ」を表出させてるのが凄い所だと思う。
大人の気遣い故にあみ子の得る情報がかなり少なくなっていて、よってJホラー的な不穏さと瑞々しさを纏ったとんでもない映画になっていると思う。
あのラスト、俺なら導かれてしまう。