バナバナ

こちらあみ子のバナバナのネタバレレビュー・内容・結末

こちらあみ子(2022年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

本作もジャケットがずっと気になっていた作品だったが、やっとNetflixに下りてきてくれたので鑑賞。

書道教室をしている尾野真千子とあみ子の関係は、最初親戚の子供を預かっているのか?とよく分からなかったが、実の親子だったんですね。
井浦新演じる父親が全く存在感がなく、母親の尾野真千子も娘を「あみ子さん」と呼び、他人行儀な感じだ。

しかし観ていると、母親もちゃんとあみ子に愛情があることは分かる。
だが、あみ子は他の子とは違う。
人の気持ちが分からないのだ。
傷付いた母親に対してあるものを見せてしまい、完全に母親の精神を壊してしまう。
それ以来、あみ子の家族も壊れてしまうのだった…。


『窓際のトットちゃん』も、子供の頃は周りとは違う突飛な行動を執っていたけれど、あみ子も他人に暴力を振るう訳ではない。
しかし、もしこの尾野真千子の様な状況でこういう行動を執られたら、私も平静でいられるだろうか。
ナタリー・ポートマン主演の『水曜日のエミリア』という作品で、ナタリーが後妻で、自分の子供が乳幼児突然死症候群で亡くなってしまったのに、先妻の小学生の子供から無遠慮なことばっかり言われて苦手に思っている。
しかし、学校の送り迎えなど世話をしなければならず、家族だから付き合っていかねばならなかったのにちょっと似ている、と思いました。

兄はこれまで、10円ハゲが出来るほど自分はずっと我慢してきたと思ったから、まだ母親が治りきれていない状況で不良になってしまったのかな。
兄も妹に悪意が全く無いことは分かっている。だから妹を殴る訳にもいかない。
この腹立たしさをどこに向ければいいのか、きっと分からなかったのだろう。

中学生に進学したあみ子。
心の寂しさのせいなのか、幻聴が聞こえるようになっている。
相変わらず家族や他人の気持ちが分からず、心に思ったことをそのまま口に出してしまうあみ子に、とうとう温和だった父親からも見放され、完全に家庭内放置児の状態になってしまう。
家族も喪失から立ち直るには時間がかかるのに、あみ子の悪気のない発言は家族の心をエグっていく。
家族からあみ子を顧みる余裕が失くなっていく。
それを寂しく思うあみ子、
…と、ひたすら悪循環が続く。

まじめに受け止める人程、ダメージが大きいように思う。
きっと、同級生の口が悪いけど、あみ子と対等に付き合ってくれていた男の子の様に、人としては好きだけど「お前、気持ち悪いぞ」と、貯めずに言えるくらいの人の方が、在りのままのあみ子を受け入れられるのだろうな。


P.S.
原作のネタバレを読むと、
尾野真千子は後妻だったから「あみ子さん」と呼んでいたようです。
そして、不良の兄がベランダから捨てた鳥の卵は、原作では3つ。
これは、兄とあみ子と亡くなった妹を捨てる…、結局両親は子供を捨てて二人だけでやり直すことを示唆しているとのこと。

うーん、そういう事となると、特に井浦新の父親が、後妻に子供達の面倒看させといて、心が壊れてしまったからって今度は子供を捨てるんだ!
と思いました。
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