耶馬英彦

ロボット修理人のAi(愛)の耶馬英彦のレビュー・感想・評価

ロボット修理人のAi(愛)(2021年製作の映画)
4.0
 ファンタジー映画である。タイトルにあるようにAIが登場する。アイザック・アシモフが紹介したロボット工学三原則の見本のようなロボットが、HONDAのASIMOやSONYのAIBOだと思うが、本作品ではSONYのAIBOが扱われる。AIBOはその名前のとおり、AI搭載のロボットだから、機械的な駆動部分と、飼い主との触れ合いを学習するソフト的な部分によって成り立っている。初期の販売価格は185,000円で、中古の軽自動車が買えるくらいの高額だ。しかし生きている犬はもっと高いし、エサ代や病院代、小物類の消耗品費や犬が壊す家の修理費などを考えると、AIBOは費用対効果の面でとても優れている。それに衛生的でもある。

 本作品の主人公倫太郎は、終映後の舞台挨拶で主演の土師野隆之介くんが紹介したように、孤児ではあるが周囲の愛に支えられてグレることなく真っ直ぐに成長し、みんなから愛され続ける人気者になった。それはみんなの愛によって、倫太郎自身が思いやりのある、愛のある少年に育ったからである。それに加えて頭がよくて身体が丈夫な働き者なら、人気者になって当然である。
 町ぐるみで応援されている倫太郎だが、孤児である以上、出生の悩みはどこまでも付いて回る。本作品は偶然から出生の秘密に迫ることになった倫太郎がどのように振る舞うかを描く。存在さえ忘れていた妹との邂逅。ファンタジーらしく幻想と現実が上手く交錯する。
 AIBOは現実のシーンと幻想のシーンの両方で活躍する。AIBOがなかったら本作品は成立しなかったかもしれない。AIBOの修理を完璧なレベルにしたいという倫太郎の、エンジニアというよりも科学者のようなこだわりも、AIBOとともに本作品に不可欠だと思う。

 総じてとても優しい作品で、街の人も倫太郎自身も、思いやりに溢れている。こんな町が本当にあったらすぐにでも引っ越したいくらいだが、ファンタジーはあくまでファンタジーだ。現実は上手くいかないことだらけである。
 しかし本作品がDVDやブルーレイになって発売されるようであれば、ときどき鑑賞して心のササクレを治したい気がする。
耶馬英彦

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