あんがすざろっく

スティルウォーターのあんがすざろっくのレビュー・感想・評価

スティルウォーター(2021年製作の映画)
4.0
父と娘の関係は、決して良好ではなかった。
言葉には出さないながらも、娘は父を頼っていない。
生まれ故郷であるアメリカ、オクラホマ州のスティルウォーターを遠く離れ、フランスのマルセイユに留学した娘は、ガールフレンド殺害の容疑で逮捕される。
父は刑務所に面会に来てくれるが、彼の力ではどうにも出来ず、娘の無実を証明できる証拠を探す他に手立てはなかった。
言葉も通じず、文化さえも違う異国の地で、父の
奮闘が始まる。



人と人とのコミュニケーションというのは、必ずしも自分の思っている通りにはいかないものですね。
異国で言葉が通じない環境も勿論ながら、親子でさえもすれ違ってしまいます。
自分がこうあって欲しいと願ってしたことが、相手にはまるで違う受け取り方をされてしまったり。
人間同士なのだから、それは避けられないことなんでしょうね。


マット・デイモンがひげ面に体型もどっしりと変えて、ブルーカラーの父親ビルを熱演。
学はないながらも、何とか娘を助けようと必死で手がかりを探そうとします。
彼にとっては、娘が助かることだけが大事で、他は別にどうでもいい。
異国の地に来たからと言って、自分のスタイルや考えは曲げません。
「郷にいれば郷に従え」ではないんです。
無骨な雰囲気が、今までのマットと違います。

娘のアリソン役に、アビゲイル・ブレスリン。
父親に対して複雑な感情を抱きながら、心を閉ざしたまま、一人刑務所から弁護士への便りに望みを託します。


マルセイユでビルの手助けをしてくれるヴィルジニーと、幼いマヤ母娘。ヴィルジニーとビルの間にも、最初こそ目には見えない壁があります。
バーで店主に激昂するヴィルジニーに、彼女の性格が表れていて、このシーンがとても好きでした。人間はどうしたって、相容れない面があるんですよね。
ビルとヴィルジニー母娘のダンスシーンが素晴らしくて。
あの結末だからこそ、ダンスシーンが余計に印象強く残ります。


サスペンスというと、少し物足りない気がしますが(スタジアムから後のシーンは、ハラハラしますけど急転過ぎるかな)、デイモンの熱演は見ものですし、最初は全然気付かないくらい普通の娘を演じたブレスリンはとても良かったです。
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