みそらしど

すべてうまくいきますようにのみそらしどのレビュー・感想・評価

3.8
誰にとっての「うまくいく」だったんだろうか。

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「Summer of 85」がとても心に残る作品だったので同じ監督の作品ということで興味を持ち、尊厳死についても以前から関心があったため鑑賞。

実の親に「終わらせて欲しい」と言われる心情の想像がつかない。
近い存在だからこそ、生きていて欲しい気持ちと、願いを叶えてあげてい気持ちの両方に挟まれて困惑するだろうなと考えてみることしかできない。
悩んだ末に、主人公のエマニュエルが「友人」として父の願いを叶えることに手を貸すと決めていて、親が友人でもあるという感覚にやや驚いたというか、納得したと言うか…。エマニュエルの家族は、家庭環境がやや複雑そうだったが、だからこそ親を他者として捉えることか彼女に浸透していて、それ故にこの選択をとれたような気もする。私が未だに親という存在をうまく認識できていないだけかもしれないけれど。

私が終始地味に気になっていたのは、父・アンドレが の発言から、次女・パスカルよりも長女・エマニュエルに対してより意識が向いている気がしたこと。もちろん彼女が主人公であるし、尊厳死実行のためにより積極的に動いたのも彼女だからという理由かもしれない。が、エマニュエルの誕生日は口にして祝った一方でパスカルの誕生日を忘れて尊厳死実行日にしようとしたり、パスカルとの最後の会話でも彼の尊厳死に関する出来事がエマニュエルの小説の材料になるというようなことを言ったり、私がパスカルだったら心が沈みそう。パスカルはパスカルで、愛されている自覚がしっかりあるかもしれないし、監督が意識して描いていたかは知らないけれど、誕生日に関しては対比のように映った。

以前読んだ本で、尊厳死や安楽死は、合法とされている国でも「耐えがたい苦痛」がある場合に限っていたように記憶していた。「耐えがたい」というのは、寝たきりで身体がほとんど動かせないとか、発語がかなり困難とかそういう状態をイメージしていたが、アンドレは時間経過と共に回復し、少し体を動かせたり、家族などとお喋りすることもできるようになっていた。「耐えがたい」なんてどうやって決めるのだろうと思っていたが、やはり人それぞれなのだろう。病や怪我を抱えていても生きることに前向きでいる人もいれば、身体に不自由がなくても毎日「耐えがたい」人もいる。
死を選ぶことが受け入れられる場所にいたいな。