ShinMakita

わたしは最悪。のShinMakitaのレビュー・感想・評価

わたしは最悪。(2021年製作の映画)
2.0


オスロで暮らす20代の女性ユリヤは、成績優秀者の常として医学部に進学するも興味が持てず心理学に転向、しかしそこでも単なるツメコミ教育で落胆し、カメラマンになろうと思い立つ。が結局今は書店の店員をやりながら自分探しの日々だ。ある日コミックライターのアクセルと出会い、彼女は恋に落ちた。40代と年上だが、優しいアクセルに甘えてラブラブな同棲生活を送るイリヤ。ところがコミックが売れて彼のステージが上がるにつれて、寂しさも覚えるようになる。そんな時、ふと紛れこんだパーティで気の合う男性を見つけてしまった。コーヒーショップ店員アイヴァンだ。彼を好きになってしまったイリヤは、アクセルに別れを切り出すが…


「わたしは最悪。」


以下、ネタバレは最悪。


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ラース・フォンの親戚らしいヨアキム・トリアーの監督作品。ジャンルとしてはラブコメになるのだろうけど、この映画、異色なのは「観客の共感度が低い女性の生き方を全面肯定している」点。才能をムダ遣いし、思いのままに行動する自己中女性ユリヤの姿は、普通の人間の目には幼稚に映るよね。こういう主人公はラブコメにはいくらもいるんだけど(ヤングアダルトなんか好例か)、そんな彼女が恥をかいたりシッペ返しを食らうシーンが無く、否定的意見を言うキャラがいないというのは珍しい。で主人公がその生き方を反省して生まれ変わるというのがセオリーで(これで観客の共感を勝ち得る)ハッピーエンド、なんだけど、本作のユリヤは反省も生まれ変わりもしないままで終わります。でもそれをちゃんと肯定してくれる描き方なんですな。
50まで生きてくると、「妥協と責任」を飲み込んで全うすることが人生だと思うんだが、ユリヤにその二語はありません。しかしフラフラしているようで実は彼女の興味には一貫性があるんだよね。「医者→心理学者→カメラマン」という流れは、「ひとと向き合い心を覗きこむ」行為が共通しています。イリヤ、実はスジが通った女なんだよね。女であることの痛み・違和感もありのままに描かれていて、例えば母になるという妥協・責任の岐路に立つこともあるんだけど、結局は我が道を進むんだよな。そんな彼女を受け入れられるかどうかでこの映画の評価が決まってしまう気もします。しかしそれは少々残念な話。キャラも大事なんだけど、映画の構成や映像表現の巧さ・オモシロさも正当に評価すべき点で、本作でもアイヴァンに逢いに行くとこやマジックマッシュルームのシーンで突き抜けたビジュアルが楽しめるし、挿入歌もいいし、オスロの美しさも味わえるしで間違いなく良作ですよ。まぁオススメの一本。



…死亡宣告受けた残り時間で、映画を観るならなにをチョイスするだろうか。本作のあるキャラが挙げたのはリンチと「ゴッドファーザーPART2」と「狼たちの午後」。うーむ、それはちょっと違う気が(笑)。バケット映画リスト、俺もそろそろ作っておくか。「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」は絶対として、「ダーティハリー」と「カサブランカ」は観るわな。あとは…
いや、この三本のローテーションかもな^_^
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