このレビューはネタバレを含みます
実話が基という事もあり、常に画面を覆う緊迫感が凄まじいが、所々にコメディチックなやり取りを盛り込む遊び心を忘れない抜かりなさがニクい。
立場の違いから蟠りを抱えたまま、それでも“生きる”という共通の目的の下協力し合う韓国と北朝鮮の面々の構図が、馴れ合いではないリアルな共闘関係という感じがして良かった。
共に食卓を囲むシーンは、空腹状態にも関わらず、毒が仕込まれている可能性から手を付けられない北朝鮮の人々と、毒など入っていないと器を手に頬張ってみせるハン大使の姿が、映画における食事シーンの中でも印象的なものとなった。個人的にこのシーンが今作の白眉だったように思う。
クライマックスのカーチェイスシーンはハリウッド映画と比較しても遜色ない迫力で、流石国を挙げて映画制作に取り組んでいる韓国の本気といったところ。
子供にさえ銃を握らせる内戦の恐ろしさと、無邪気に銃を撃つ子供達の姿には、恐怖や怒りと共に虚しさが胸を締め付けてきた。
キレ者かつ格闘シーンもこなしていた韓国のテジン参事官役のチョ・インソンが最も美味しい役所だと思うのだが、テコンドーの有段者だと知り納得。
他には、北朝鮮のテ参事官役のク・ギョファンが妙に印象的だなと思っていたのだが、『新感染半島』でソ大尉を演じていた。今作でも良い役を射止めていたのだな。
中規模公開作だが、是非とも多くの人に観てほしい一作。このレベルの作品が埋もれるのは勿体無い。