ありがちなお仕事コメディかと思っていたら、時代遅れな中年警察官の挫折と再生を描いた良質な人間ドラマで、予想外の収穫だった。2018年頃から明らかに仕事量が減っていた阿部寛(金融系とCM契約すると他の仕事が制限される? 役柄もマンネリ気味だった)の再出発とリンクする部分もあり、グッと来るものがある。
阿部が演じる主人公だけではなく、音楽大出身で近々シングルマザーになる事が決まっている清野菜名や、第一志望の刑事課に入れなかった高杉真宙等、言わば落ちこぼれのメンバー達が音楽の「セッション」により助け合っていく姿を、奇をてらう事無く描いているのが素晴らしい。
感情描写が不足しているとの指摘が多いようだが、そこを演奏でしっかり表現している事(役者が実際に演奏している)、そしてこれが内田英治監督によるオリジナル脚本である事の方が大事で、むしろありきたりな台詞に頼ってない事に拍手を送りたい。
演奏がぴったりと噛み合う事から生まれる高揚感。終盤は温かい涙が止まらなかった。警察が題材の映画は、撮影に協力している警察を美化したプロパガンダ的傾向が強くなりがちだが、本作に限ってはそれが全く無いのも良かった。