さりさり

バトル・ロワイアル 特別篇のさりさりのレビュー・感想・評価

4.0
おそらく好きになれないだろうと予想して、ずっと避けて来た本作。
中学生がお互いを殺し合う法律が施行された…と聞いただけで「んな、バカな!」と思ったし、人の命を軽んじてる気がして、もう20年も前の映画だが、多分この先も観ることはないだろうと思っていた。
ところが今日、ごんすさんのレビューを拝見して、急激に観たくなってしまったのだ。
さすが、ごんすさん、説得力のある文章!

*****

近未来、全国から抽選で選ばれた中学3年生のあるクラスが、修学旅行を装い、孤島に連れて行かれる。
そこで各自武器を渡され、お互いを殺し合うよう命令される。
最後の一人が生き残るまで。

こんな話は絶対ありえない。
一見「死」をゲーム化した不謹慎な映画なのかと思ったが、そうではなかった。
監督の深作欣二は自身の戦争体験とこの映画を結びつけた、という話を聞いて「なるほど、そうだったのか」と納得した。
それならば観ることが出来る。
何か強いメッセージが隠されているのだろうと思ったからだ。

映画の中の少年少女は15歳。
深作監督も15歳の時に戦争を経験した。
意味のない無慈悲な殺し合い、殺さなければ殺されるという悲惨な戦争。

※深作監督は、学徒動員で軍需工場に従事、その際、米軍からの艦砲射撃で友人達が犠牲になり、その死体の一部を集めたらしい。
その時、国や大人達に対する不信や怒りがこみ上げたという。

これは「怒り」の映画なのだろう。
世の中に対する怒り。
わけもわからず争いの中に放り込まれた青年たちの怒り。

15歳といえば一番多感な時期だ。
大人になりきれず、絶えず揺れ動く心、友人たちや教師との人間関係の葛藤、淡い恋や儚い夢。
それらが全て、この激しすぎる映画の中に描かれていた。

本当に切羽詰まった時に現れる人間の本性は大人も子供も変わらない。
いの一番に攻撃し出す生徒。
何とかして逃げ出す作戦を計画する生徒。
仲間を集め助け合うが、呆気なく裏切る生徒。
もう誰も信じられない。
信じられるのは自分だけ。

戦うことに恐れをなし、自らの命を断つ生徒もいた。
いや、恐れたのではないと思う。
友を裏切り、友を傷つけ、殺し合う自分が許せなかったのだろう。
弱かったんじゃない。
ただ純真なだけだったのだ。

私だったらどうするだろう。
そんな状況に立たされたことがないから想像もつかない。
きっと物陰に隠れて、震えながら様子を伺ってるだけかもしれない。

戦争を知らない世代への戒め。
深作欣二監督の思いが詰まった衝撃作だった。
観て良かった。


(※考察を参照)
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