ケイパー・ムービーの元祖。監督はワーナーを辞めたばかりのジョン・ヒューストンで、華々しいイメージのMGMスタジオで作られたとは思えない硬派でいぶし銀の作品である。
同じスターリング・ヘイドン主演の犯罪映画『現金に体を張れ』と立て続けに観ると余計に面白い。よっぽど馬に縁のある人なんだなぁ。
今回は宝石強盗のおはなし。
強盗をやってはその金を競馬につぎ込むヘイドン演じるヤクザが街をさ迷っているところから物語ははじまる。
折しも伝説のギャングで通称"ドク"と呼ばれる老人が出所直後に行方をくらまし、所轄管内は厳戒体制が敷かれていた。
この老ギャングをサム・ジャフェが演じている。痩せて小柄なお爺さんで全然コワモテではないのだがこれが却ってリアルさがある。
彼が出所前に計画した犯罪を実行するため、軍資金を調達しようと街の有力者で悪徳弁護士のルイス・カルハーンに接触する。
気前よく資金を提供すると答えたカルハーンだったが彼にはある企みがあった。
薄々怪しいと感じながらもサム・ジャフェは、用心棒としてヘイドンを、運転手としてジェームズ・ホイットモアを、そして金庫破りの名人を雇って宝石強盗を決行するのだった。
その後のケイパー映画同様、本作も用意周到に計画された犯罪(とは言っても後続の作品と比べると地味さは拭えないが)が思わぬところからボロが出てしまう。
サム・ジャフェもカルハーンもいいお歳にも関わらず女性にお盛んでそれが仇になるのだが、この辺りの人物造形が『鬼平犯科帳』の老盗賊にありそうな雰囲気。
そしてこの男臭い映画に華を添えてくれるのがヘイドンの恋人役のジーン・ヘイゲンとカルハーンの情婦役でまだ若手だったマリリン・モンロー。
ジーン・ヘイゲンはご存知『雨に唄えば』のキンキン声のリナ役を演じたあの人。本作も泣きながら付け睫を外すシーンなど藝の細かいところを見せてくれる。
一方、モンローの方は初々しく、何か一生懸命頑張って演じているという感じがする。
終盤、コミッショナー役のジョン・マッキンタイアが警察の必要性について記者団に対して熱弁する。この辺りの教訓めいた展開が社会派ドラマっぽい。
■映画 DATA==========================
監督:ジョン・ヒューストン
脚本:ベン・マドウ/ジョン・ヒューストン
製作:アーサー・ホーンブロウ・ジュニア
音楽:ミクロス・ローザ
撮影:ハロルド・ロッソン
公開:1950年5月23日(米)/1954年3月11日(日)