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カード・カウンターのumisodachiのレビュー・感想・評価

カード・カウンター(2021年製作の映画)
4.0



ポール・シュレイダー監督最新作。

アブグレイブ捕虜収容所での拷問の罪に投獄されていたウィリアムは、ギャンブラーとして生活していた。できるだけ目立たないようにカジノを転々としていたものの、ある若者と出会ったことをきっかけにトーナメントに挑戦することになり……。

過去に囚われ続けるギャンブラーを演じたオスカー・アイザックの魅力爆発な1本。薄暗い照明と埃っぽく無機質なアメリカ地方都市のカジノやモーテルの空気感に加え、アブグレイブ捕虜収容所での蛮行がことあるごとに差し挟まれれるので、全体的にはかなり暗い(ポール・シュレイダー作品なので当たり前だが)。

しかし、『魂のゆくえ』や『タクシードライバー』などに比べたら格段にわかりすいシンプルなストーリーなので、非常に見やすい。と、同時に「こうなるしかないよな」という展開なので意外性もあまりない。見やすいが、すべてが想定内だったので、期待値よりはやや下回った印象。

ただ、これがアメリカです!!という画を用いて、アメリカの欺瞞に思いっきり突っ込んでいくテーマはけっこう好きだった。

私の兄はアイオワ州に住んでいて、今まで何度か会いに行ったことがるのだが、そこに広がっている世界はNYやSFの中心部とはまったく異なる。まばらな人並み、面白みのないガランとしたインテリア、妙に薄暗い照明、だだっ広い景色。本作に映っている世界は、まさに私がアイオワ州に行ったときに感じるものだった。そこに移りこむ、星条旗デザインの服を着たUSA野郎(めっちゃ強いギャンブラー)。静かで薄暗い中で、ひとりだけ「USA!USA!」と鼓舞されて元気いっぱいに振る舞う彼の姿は、ほんの少しのコミックリリーフであると同時に、非常に象徴的だった。彼を変にイヤな奴に描いたり、ストーリーに直接絡ませなかったところも上手いなと感心。

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