ジェイD

翔んで埼玉 ~琵琶湖より愛をこめて~のジェイDのレビュー・感想・評価

4.0
ど う し て ま た 作 っ た 笑
茶番はクオリティと真剣さが増すほどに面白くなるものだが、それにしてもバカすぎる。よりによって関西に飛び火した都市伝説は、いよいよ国家規模の大事に…。

埼玉解放戦線の活躍により、埼玉はしばしの平穏を取り戻していた。しかし未だに東京へと目線を向ける埼玉県民たちのため、麻実麗は埼玉に海を作ることを掲げ、白浜を求めて和歌山へ赴く。しかし滋賀や奈良の人々は大阪らによって虐げられていた。滋賀解放戦線の桔梗とともに、新たなる戦いが始まろうとしていた。

前作の時点でだいぶイカれていた埼玉伝説がまさかの続編として帰ってきた。オリジナルストーリーということであの雰囲気を保持できるのかと不安に思ってたら、凄まじいスケールアップによって笑いが止まらない超怪作になっていた。美術セットからロケに至るまで完璧に作り上げたヴィジュアルは、絶対そこまでしなくて良いと思えるほどに素晴らしく飽きることがなかった。『茶番は芸術的クオリティを高めるほど笑いが増して面白い』というのが、どぶろっくの大きなイ◯モツのネタを山崎育三郎らがやったのを見た時に考えた自分の中では有力なセオリーなのだが、今作はそれを底上げする一作となった。

自分は三重県生まれ千葉県育ちのハイブリッドだが、両県が重要なところでオチに使われていたのが嬉しかった。このシリーズの不思議なところは、バカにされるほどその県に愛着が生まれ、それが自分の出身ならば共感として笑い飛ばせるという構成にある。同時に、「埼玉県人には草でも食わしておけ」「滋賀県人は害虫でも食っとけばよろしい」と言った突飛なセリフも、そうした罵声を「くだらない」と認識した時には、同じ国の中で肌の色や出身が違うだけで虐げられる現実の差別もまた同様に可笑しいと否定できる思わぬ社会性もある。そんな真剣に観るものでは決してないはずなのに。

今回はその舞台をまさかの関西に移し、凶悪な大阪府と兵庫・神戸の連合を滋賀・奈良・和歌山、そして海を渡った埼玉で迎え撃つ。とにかくこの大阪が恐ろしいこと極まりない。大量の粉物を製造しそれを使って尋問、洗脳してくるのだ。その先に企むのは、日本全土を大阪にするという計画。府知事の衣装がどう見ても池乃めだかさんなことに目もいかないほどの鬼畜の所業である。

さらに滋賀県もまた埼玉サイドになるわけだが、この漢字のゲジゲジとかだけでなくトビタこと飛び出し坊やのヒロイックさには思わずグッとくるものすらある。伝家の宝刀『琵琶湖の水を止める』も実際は想像よりとんでもない事態になることをスクリーンいっぱいに映しだし、どこにCG力入れてんだと圧倒される。

もちろん愛あってのディス。大阪に侵食されつつある者たちが新喜劇ギャグを放つ様はいち新喜劇ファンとして笑うポイントだった。まさか島木譲二氏のパチパチパンチやポコポコヘッドを見れるとは思わなかった。最後に埼玉がいいとこ持ってくところも痺れる。

県民ギャグをすべて拾い切ることができたわけでは無いが、全力を注いだ愛あるディスに頭を抱えるのは幸せな時間だった。この感じで全国的にやったらいいと思う。次は中部で富士山を取り合う山梨と静岡の戦争とか観てみたい。多方面に怒られながら続けて欲しいとそれなりに願う。

とはいえ本気で怒られればいいのに、と思ったところについてはネタバレコメント欄で。
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