Dick

愛なのにのDickのネタバレレビュー・内容・結末

愛なのに(2021年製作の映画)
4.8

このレビューはネタバレを含みます

❶相性:上。
★楽しい艶笑コメディ。クスクス笑いの連続。
★示唆に富んだ奥深い内容に仕上がっている。

➋時代:現代。

❸舞台:特定されていないが、関東の地方都市。

❹主な登場人物
①多田浩司(こうじ):瀬戸康史(せと・こうじ)(32歳)
主人公の古本屋店主、30歳。アパートで一人暮らし。客の女子高生、岬から一方的に求婚され当惑する。浩司はアルバイト時代に恋して振られた一花のことが忘れられない。フェミニスト。
②一花(いっか):さとうほなみ(31歳)
亮介との結婚を控えて同棲中、27歳。亮介が浮気したことを知って、自分も同様の体験をしたいと、浩司と関係を持つ。
③岬(みさき):河合優実(かわい・ゆうみ)(20歳)
古本屋に通う女子高生、16歳。多田にせっせと恋文を送る。
④亮介(りょうすけ):中島歩(なかじま・あゆむ)(32歳)
一花と同棲中の恋人、33歳。女に手が早い。婚約者一花との挙式のウエディングプランナー美樹とも早々に関係を持つ。
⑤美樹(みき):向里祐香(こうり・ゆうか)(30歳)
ウエディングプランナー、25歳。学生時代に学費を稼ぐために風俗のバイトをしていて男性経験が豊富。
⑥正雄:丈太郎(18歳)
岬のことが大好きな同級生、16歳。
⑦広重:毎熊克哉
浩司と一花の友人。33歳。一花の結婚式に招待されるが、浩司は呼ばれない。

❺考察とまとめ
①実に楽しい艶笑コメディ。脚本と役者が上出来。クスクス笑いの連続だった。コロナの心配がなければ大爆笑間違いなし(笑)。
②それなのに、よく考えると示唆に富んだ奥深い内容に仕上がっている。
★天晴れなり!
③本作の一番の要(かなめ)は、主人公・浩司(瀬戸康史)の誠実なキャラ。
他人を傷つけない気配りの人である。学生時代に恋して振られた一花のことが未だに忘れられない。悪くいえば、優柔不断で煮え切らないとも言える。そして、浩司には、本人が全く気付いていない卓越した特技があった(笑)(下記⑥★参照)。
④2番目は、ヒロインの一花(さとうほなみ)の天真爛漫で割り切りの良いキャラ。
悪く言えば、自己中で気配り不足。同棲中の婚約者、亮介が浮気していることを知って、別れるのではなく、「自分も同様の体験する」と宣言して、かって自分を好きだった浩司に関係を迫るのだ(唖然)(笑)。
★亮介の浮気相手は、一花との挙式を担当するウエディングプランナーの美樹(向里祐香)だが、一花は最後まで誰かは知らない。一花にとっては、相手が誰かは問題ではないのだ。
⑤迫られた浩司は、当然ながら拒否するが、一花が「貴方がダメなら他の人に頼むと」言うので、一花の為にしぶしぶ応じる。慎重な浩司はコンドームを2枚重ねにする(笑)。
★あきれる一花、クスクス笑う観客(笑)。
⑥浩司と関係を持った一花は、神父に懺悔して、どうしたらいいかと相談する。その理由は、婚約者意外と関係を持ったこと以上に、浩司とは、亮介との行為では得られなかった快感を覚えたためだった(笑)。
★浩司は相手の女性を歓喜させるセックスの達人だったのだ(笑)。
⑦神父は、「御心(みこころ)のままに従いなさい」と答えるが、一花は、勘違いして「自分の思うままになさい」と受け取る(笑)。そして、浩司に2度目の関係を迫る。
⑧迫られた浩司は、今度も拒否するが、一花の為に応じる。
★さすがは誠実なフェミニスト(笑)。
⑨2度目も期待以上の快感が得られた一花は、浩司に、結婚後も関係を持ちたいと言う。
★おいおい、それはないだろう(笑)。
⑩気配りの浩司も、さすがに今回は拒否し、一花に「この結婚はやめた方がいい」と助言する。
⑪3番目は浮気者の亮介(中島歩)。
セクシーな女性に会うと、我慢できないキャラ。イケメンで経済力もあるので、狙った獲物は逃がさない。相手は成人で合意の上のことなので、亮介が独身なら、容認されるかも知れないが、今は挙式を間近にして婚約者と同棲中なのが問題である。
★こんなクズ男は許せない。でも、けじめのつけ方は心得ている。反省して改悛の決意をしたことは良しとしよう。
★亮介からは、世界史に名を留め、映画の世界でも有名な実在のプレイボーイ2人を連想した。「ドンファン(ドン・ジュアン、ドン・ジョヴァンニ)」と「カサノバ」である。特にカサノバは、自伝「我が生涯の物語」にも記している通り、生涯で1,000人以上の女性と関係したと述べている。
★この2人に共通していることは、身を粉にして女性に尽くしていることである。自分本位な亮介とは根本的に違うのだ(笑)。
⑫亮介には、本人が気づいていない重大な欠点があった。★セックスが下手なのだ(笑)。
⑬一花に浮気がばれた亮介は美樹に別れの仁義を切る。「今日で最後にしたい」と言われた美樹は、お返しに亮介のセックスが「下手です」と告げる。亮介にとっては寝耳に水の大ショックである。
★いい薬になった(笑)。
⑭4番目がウエディングプランナーの美樹(向里祐香)。
美樹は、学生時代に学費を稼ぐために風俗のバイトをしていて男性経験が豊富。そして、やりがいのある誇れる仕事に就いた今でも、顧客の男性と関係を持っている。その理由は、それが相手の夫婦生活を円満にすることに寄与すると思い込んでいるためである。道義的には褒められないが、彼女なりの人生哲学なのだろう。
⑮結局一花は、セックスが下手な亮介と結婚する。
★一花は映画『卒業(1967)』が嫌いだといっていたので、この選択は納得出来る。
⑯そして、お待たせしました。5番目が女子高生の岬(河合優実)の純情なキャラ。
ⓐ岬は行きつけの浩司の古本屋で一冊の本を持ったまま外に出て行ってしまう。追いかける浩司だが、息切れしてしゃがみ込む。それを心配した岬が自販機でペット水を買い、浩司に差し出す。
ⓑ浩司から事情を聞かれた岬は、「名前を憶えてもらいたくてやった」と告白する。そして、「好きです。私と結婚してください」と続ける(笑)。
ⓒ驚き戸惑う浩司だが、岬が本気なのを知ると、「大人が高校生に手を出すと捕まる。僕には好きだった人がいる。」と言うが、岬は「淫行したいのではない。だめなら卒業するまで待つ。」とあきらめない。
ⓓかくして、岬から浩司へのラブレター攻勢が始まったのである(笑)。
ⓔ岬のことが大好きな同級生の正雄が愛を告白する(笑)が、岬は撥ねつける。
★岬の浩司への一途な想いは不変なのだ(笑)。
⑰一花とのセックスと、彼女の結婚により、浩司は、一花への片思いにけりをつけ、自分の道を歩き始める。
⑱浩司はようやく岬からの恋文に返事を書く。
⑲それを知った岬の両親が、浩司の家に押しかけてきて、警察に通報する。浩司は、両親に「愛を否定するな」と諭し、警官に対しては、「やましいことはない。プライバシーだ」と答える。
⑳すべてが収まるべきところに収まったのである。
㉑浩司と岬の将来は、現時点では誰にも分からない。しかし、歳の差を超越した明るい未来が期待される。

★目出度し目出度しのハッピーエンドでございます。お楽しみ様でした(笑)。
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