このレビューはネタバレを含みます
老人ホームで気力を失ったように暮らしていた主人公パット(ウド・キア)が、かつて過ごした町へと戻る旅の中で本来の姿を取り戻していく過程が生き生き描かれている。一方で、その旅は人生へ別れを告げ死へと向かう旅でもある。個人的な好みからすると情緒過多に感じる ところもあったが、品行方正とは言えないパットの振る舞いや諸行無常な現実など、刺や影のある描写も織り込まれているため全体としては悪くないバランスになっていると思う。
特に、この世に自分が生きた意味は何も残らないのかと苦悩するパットに、最後の最後で思わぬ人物から一種の「救い」が与えられる展開はとてもエモーショナルだ。その後の、変に湿っぽくならない粋な終わり方も良かった。
