岩嵜修平

笑いのカイブツの岩嵜修平のレビュー・感想・評価

笑いのカイブツ(2023年製作の映画)
3.6
岡山天音に圧倒される2時間。最後までツチヤタカユキに少しも共感できないままでも面白く観られたのは、菅田将暉や仲野太賀らとの凄まじい演技合戦があってこそ。笑いに呪われた男が、実力だけで一歩ずつ上っていく物語は、ネットが普及する手前の時代ならではかも。不器用の極み。

岡山天音ほど、多様なキャラを演じることが許される若手俳優は日本では稀有かもしれない。脇役でも強い印象を残してきたけど、ちゃんと主役でも輝ける。これだけ「人間関係不得意」に説得力がありながら、しっかり人には愛されてしまう人物にリアリティを与えられるのは凄い。若手俳優が嫉妬する演技。

ベーコンズはオードリーがモデルだそうだが、春日っぽさは残しつつ、仲野太賀と板橋駿谷でちゃんとオリジナルな芸人(令和ロマンの指導も良かったのだらう)になっていたし、元芸人の前田旺志郎の起用も前原滉の放送作家(サトミツ?)ぽさも絶妙。初長編(ながらベテラン)の滝本憲吾監督の演出力も。

ただ、お笑いがテーマになっていて、プロであるツチヤさんがネタづくりに入っているにも関わらず、ネタが悉く笑えなかった(映画館でも笑いは聞こえなかった)のは悩ましい。ベーコンズの長尺ネタは会場で実際に客見せしたようだが生と映画館との違いか。狂人としての人生を肯定するラストは良かった。
岩嵜修平

岩嵜修平