キャスト変更で物議を醸し、下がってしまっていた前評判をクオリティで完全に覆している作品。
原作者が制作に深く関わっていると言うだけあって原作に対する理解は非常に深く、構成や展開には全く無駄を感じない。
特筆したいのは、原作をほとんど知らずに観に行ってのレビューだという点。
内容としては原作で最も山場となったインターハイの1試合を軸としつつ、湘北ポイントガードの宮城の回想により彼のキャラクターを掘り下げていくというもの。
どこまでが原作と同じ展開なのかはわからないのだが、全てが原作通りと言われても納得できるほどに非の打ち所がない構成をしている。
いわゆるメディアミックス作品にありがちな、雑な回想シーンで原作の物語を描こうという意図は全く感じない。オープニングからエンディングまであくまで一本の映画作品として、宮城リョータという少年を取り巻くヒューマンドラマを成立させている。
桜木花道ではなく、この映画の主人公は、完全に宮城リョータである。むろん試合のキーパーソンであることは間違い無いのだが。
原作の主人公をあえて主役に据えなかったというのは大英断。おそらく、桜木花道を主役とした映画を作っていたらありきたりな作品に終わっていたのではないだろうか。
いちストーリー作品として優秀でありつつ、原作屈指の名試合と謳われるだけあって、単なるバスケットボールファンとして試合展開を追いかけているだけでも十二分にのめり込める。
映画的な、映像・音響の使い方に関しても並ならぬこだわりを感じ、選手と同じ目線で、コートの上からバスケットボールの試合を観戦できるという意味では現実を上回る臨場感を覚えた。
原作を知らないゆえに、試合展開を全く知らないまま鑑賞したことも結果的には大正解だったかもしれない。
鑑賞後すぐのレビューであることを差し引いても、非の打ち所が見当たらない。あるいは、原作ファンからすればまだ物足りない部分はあるかもしれないが。
本当に珍しく、上映期間中のリピートを検討している作品。
