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THE FIRST SLAM DUNKのレのネタバレレビュー・内容・結末

THE FIRST SLAM DUNK(2022年製作の映画)
3.0

このレビューはネタバレを含みます

「原作読んでるからネタバレも何もないよ」という人も、そういうのとは別種の情報があるので観るまで読まないことをおすすめします。


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原作の山王戦を素晴らしいと感じつつも、特に思い入れはない──リアルタイムでもないし、バスケもしていなかった──人間の感想だと承知してほしいのだけど、全然熱くなれなかった。これでいいのか?
結局、3Dの映像に熱くなれるかどうかで感想が分かれる気がする。

とにかく3Dの技術は凄まじい。人間の体の動きをこんなふうに再現できるなんて!
ディズニー古典の3D作品化なんかを見ると、いくら精緻にしても手描きアニメの魅力に到底及ばず、最新技術お披露目会みたいでがっかりするのだが、本作は元がスポーツ漫画なので手法と内容が合わさったときのマジックが起きている。精緻で洗練された体の動きはそれだけで見どころになり、ときにぼんやり見惚れてしまうのだ。ただ、本当にこれが見たかったのかというと……。
多くの人がそうであるように、結局いちばん興奮したのは最初の線画が歩き出すシーンであり、ほんとうに見たかったのはそちらなのだ。


加えて、この作品が作られることになった社会的な背景にも想像を巡らせてしまう。宮城リョータを主人公に据えたのは素晴らしい判断だと思うが、ほんとうにこの掘り下げ方でよいのだろうか。

選手の家族でいうと、原作には桜木の父親が一瞬だけ登場する(父が発作で倒れ、救急車を呼びたいのに不良に邪魔される顛末を桜木が回想するシーン)。あそこを読んだときに、おそらく現代の漫画であれば「桜木の父親はどんな人物なのか」「圧倒的な身体能力や性格はどのように培われたのか」等を必ず掘り下げてしまうのではないかと思った。

そういう掘り下げは今っぽいけれども食傷気味で、2次創作的な想像力につながっている。むしろ、説明されない余白が心地よいのだが、これはスラムダンクの余白というより90年代の余白といえる。
まあ、で、この作品が2022年に映画化されたのはまさしくこの時代の余白のなさであり、2次創作を求める客の要望に応えたノスタルジーへの奉仕ではないか、という……。
三井と宮城の初対面にしたって、数年後の沢北とのマッチアップにしたって、明らかに(ただ作者公認というだけの)2次創作だもの、、。

シンエヴァもまったく同じだけれども、新しい到達点を見せるというよりは、ノスタルジーをあてにした商売だと感じさせる。映像技術にしたって、3Dが見たいのか、冒頭の線画が見たいのか、みんなもっかい考えてみてくれ〜、と思った。


わかったよ、リョータ。俺達も絶対にこのタイト・ロープからはおっこちないようにする。誓うよ。
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