みかん

硫黄島からの手紙のみかんのレビュー・感想・評価

硫黄島からの手紙(2006年製作の映画)
3.8
クリント・イーストウッド監督の『硫黄島プロジェクト』2作目の、日本側視点から硫黄島の戦いを描いた戦争ヒューマンドラマ。

真水も無く、食料も物資も兵力も全然足りなくて負けが見えてる硫黄島で戦った、約2万人の旧日本軍の兵士たち。

一人一人に手紙を書く相手がいた。
愛する家族がいた。

一人一人が家族(大切な人)を守るために命を懸けて戦った。

そしてそれはアメリカ軍兵士もそうだった…。

「家族」という最小単位の社会集団の集まりで成り立っている「国家」。

お国のために戦うと言っても、結局はみんな自分の家族や友人をはじめ大切な人たちのために戦っていた。

戦い合った人間たちを敵味方関係なく俯瞰して見つめてみれば、お互い人間同士で大切な人がいたり、戦争が無かったら友情を結べたりしたはずの事実があり、改めて戦争は残酷なものだと深く考えさせられました。

徴兵されて硫黄島へ送り込まれた一兵士である西郷。

過酷な状況の中で、戦友と笑い合ったり尊敬する人が出来たり。
そしていつも心にあるのは、愛する妻と産まれてくる子供のこと。

何度ももうダメだと呟くけど、それでも必死に戦場を駆け抜け、最後までどうなるかわからず目が離せませんでした。

それから、総指揮官の栗林中将。

従来の戦法や美学にとらわれず、合理的で創意工夫を凝らした作戦や、兵士に対する思いやりのある態度には感銘を受けました。

また、1932年ロサンゼルス五輪で馬術の金メダリスト西中佐。

貴族(華族)らしい気高さと人柄の朗らかさ、温かさに心を打たれました。

硫黄島で戦った膨大な数の命、人生があって、その家族があって、願いがあって、私たちの今に繋がっていることを、決して忘れてはならないと思いました。

渡辺謙さんの熱演、二宮くんの自然体の演技、素晴らしかったです!


★2006年硫黄島。地中から数百通の手紙が発見された。何故こんなところに大量の手紙があったのか。

それは、1944年6月硫黄島。戦局が悪化し敗戦が色濃くなってきた中、栗林中将が新しく総指揮官に着任した。

アメリカ留学経験もある彼はアメリカ軍の強さを感じとっており、「勝つ」戦いではなく、「負けない」戦いをするため、島を隈なく歩き回り、敵軍が浜辺を上陸してきたところを全力で迎え撃つ従来の水際作戦を捨て、地下にトンネルを掘って張り巡らして基地を繋ぎ、島を要塞化してゲリラ戦を展開するため、兵士たちにトンネル掘りを命じ準備を進めていった。

1945年2月。アメリカ軍は上陸部隊約6万人に、空爆や艦砲射撃など行う後方支援部隊約10万人を率いて硫黄島に到着。

守備するのは孤立無援の約2万人。

圧倒的な兵力差の中、アメリカ軍は5日で落とせると目論んでたが、36日に及ぶ歴史的な大激戦となっていく、、。


余談ですが、渡辺謙さんが役作りのためハリウッドの撮影現場まで持ち込み、バイブルのように熟読したと言われる、

『散るぞ悲しき 硫黄島総指揮官・栗林忠道』
(梯 久美子,2005年,新潮社/2006年大宅壮一ノンフィクション賞受賞)

という文庫本。
プロローグのエピソードでもう号泣でした。。。

こちらを読んでから鑑賞したため、より栗林中将の人柄や硫黄島の戦いの死闘ぶりに理解を深めることが出来ました。

映画ではないですが、おすすめです!
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