せんな

余命10年のせんなのレビュー・感想・評価

余命10年(2022年製作の映画)
3.8
原作「余命10年」は文庫本発売当時に買って、泣きながら読んだ思い出があります。今回の映画は、小説と大筋は同じでも、細かい設定がかなり違っています。それはなぜだろうと考えながら見ていたけど、終盤、茉莉の書く小説に「流加」という名前が出てきたことから、茉莉の物語を書いた、『余命10年』の原作者・小坂流加さんの物語がこの映画なのかな、と思わされました。映画のストーリーより何より、その事実にぐっときました。小説から設定を大きく変えたことは決して逃げな訳ではなく、リスペクトあってのことなんだろうなと納得できてとても良かったです
(しかしそれとは別に、原作通り全力でコスプレする小松菜奈は正直見たかった…!)

とはいえあらためて小説を読み直してから映画を思い出すと、全体的に薄味なストーリーになっているんじゃないかな…と感じました。小説に出てくる、茉莉の生と死に関する、綺麗事だけでは済まない考え方とか、その葛藤とか。映画では比較的さらっと流していたように感じました。どちらかというと、「日々の美しさ」みたいなものに焦点を当てていたのかな
そこを表現する映像が、どれもこれもすごく綺麗…一瞬一瞬を大切に生きる、茉莉の日々への愛おしさが伝わってくるようでした。特に夜桜のシーンはハッとさせられた 映画の中で、映像の綺麗さで息を呑んだのは初めてかもしれない
ほかには、終盤で茉莉がお母さんに気持ちを吐き出すシーンが印象に残りました 茉莉の感情が強く伝わってきて胸に刺さった

号泣するというほどではなかったけど、美しい映像の余韻に浸れる映画でした。
せんな

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