この映画って、
ジャンルで言うなら何なんだろうって考えながら観てた。
例えば、
サスペンスと考えたなら。
主人公の境遇、犯人との接点、選択
犯人の人柄、行動様式
とにかく変数が多い。
極端な言い方をすれば、
悪魔の実を食べた孫悟空が、ドラえもんと一緒に甲子園を目指しているような…
サスペンスというには大味すぎる作りだ。
例えば、
人間ドラマと考えたなら。
背景と人間関係の描写が薄い。
主人公の妻への深い愛情の背景はナレーションで片付けられているし、
父子関係がどのようなものであったのか、娘があそこまで闇雲に父を探し回るのはなぜかについても表現されていない。
犯人がどんな過去を背負って、
主人公との間にどのような関係性が築かれていたのか。
細かな描写はほとんどなく、
ただそういうものだとして描かれている。
むしろ、ただそういうものとしての今を意図的に描いてるようにも見える。
仮にも人間ドラマというにはチープすぎる。
ホラーというほどの狂気でもなければ、
恋愛要素もこれといってない。
なんとも言えない映画だ。
加えて、意図のわからない演出がちょいちょい出てくる。
ばったりも甚だしい遭遇だったり、
必要な描写が抜けていたり。
どうにも珍妙な作品だ。
だが、美しさを感じる映画でもある。
ぼろっとした街並み、個性豊かな演技、独特なカメラワーク。
ただ。
ずっと観ていたくなるほどの美しさか、
というとそこまででもなく。
やはり美しいより珍妙が優る不思議な映画だった。
【ネタバレ】
ラストの卓球のシーンがとてもいい。
映画は記録なので、演劇などと比べてライブ感を演出しづらい。
卓球のラリーのような行為には、
「まさにあの場で繰り広げている」という、同時間性がある。
「バスケのシュートをカット割せずに録る」とかもそうだが、まさに撮影の場で行われていたライブなのだと感じさせてくれる。
同時間性の中で、親子の関係が変わる。
生の時間とストーリーが交わる。
そのようなLIVE感の演出は、
むしろ記録という宿命を背負った映画だからこそできるものだと思う。