きゅうげん

パワー・オブ・ザ・ドッグのきゅうげんのネタバレレビュー・内容・結末

パワー・オブ・ザ・ドッグ(2021年製作の映画)
4.3

このレビューはネタバレを含みます

ジェーン・カンピオン監督最新作。
ホモソーシャルな牧場のカウボーイと、嫁いできた共依存親子との、スリリングでショッキングな人間模様を描くドラマです。
意地悪で捻くれた牧場主と、健気だけど苦悩する後家さん、引っ込み思案でフシギちゃんな連れ子の、胃の痛くなるような三角関係と、予想外の顛末に観ていてツラくなっちゃいます。

今は亡き師匠ヘンリーを愛しながらも、周囲にはミソジミー的・ホモフォビア的に振る舞ってしまうカンバーバッチ演じるフィル。若奥様らしく気丈に振る舞うも、プレッシャーや嫌がらせに耐えられず酒に溺れるローズ。
このふたりを二輪の軸として各章が展開されてゆくのですが、ピーターをめぐり「女々しいと思ってたけど意外と骨のあるヤツ」と歩み寄る伯父、「楽しく過ごしてほしいけど、嫌いな人間とは仲良くなってほしくない」とアンビバレントに悩む母、両方だんだん深みにハマってゆく感じが、もう大変ですね。
そしてだからこそ浮かび上がるピーターの存在。フィルとローズは“子供”という前提で干渉的に彼へ接しますが、衝撃的な真相によって大きく突き放される形になります……。

そんな物語の深長さもさることながら、鞍の手入れやロープ作り、逞しい馬や遠景の山肌など扇情的なまでの撮影には陶然としますし、牧童たちや女中さんはどなたも朗らかで、川遊びシーンやテニスシーンなど日常パートは微笑ましいくらい。
それとやっぱりトーマシン・マッケンジー!
彼女の声が大好きなんですよね〜。
題材・物語・映像どれをとってもかなりお気に入り、ディスクとして手元に置いときたい〜〜〜。