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義足のボクサー GENSAN PUNCHのdeborahharryのレビュー・感想・評価

義足のボクサー GENSAN PUNCH(2021年製作の映画)
4.3
note-director,actor
待望の日比合作、メンドーサ監督。
手持ちカメラでカンペキに成立させられるのは、やはりメンドーサ監督とダルデンヌ兄弟監督だけかもしれない。

アマ戦、プロ選、一区切りまでの流れはほぼ手持ち長回し。アマプロの実力が明らかに違うフィリピン選手に、必死に対戦する尚玄さん、これは映画、と思いながらも息を飲み見入ってしまうほど好演。

日本人ボクサーが主人公でありながら、フィリピンのボクシングの位置付けがしっかり描かれている。フィリピンの社会構造、慣習、文化、映画を通して世に知らしめる巨匠メンドーサ監督の使命か、日比の割合が結果5:5になっているのが、フィリピン映画好きの日本人にはかなりうれしく、誇らしい。

フィリピンの俳優さんたちの演技はそうとうハイレベルなのに、日本では認知されていないのがとても悔しい。

「俳優さんに脚本渡さない」メンドーサ演出は、よっぽど優秀な俳優さんでないと、その意図を読み取ることはできない。
同志の「死」を受け入れなければならないフィリピン人俳優さんたちの演技は、観ている方も、涙もでないほど身にこたえた。

同じアジア人なのに、カンヌ主演男優賞ソン・ガンホさんはニュースになっても、その前にメンドーサ監督の「ローサは密告された」で主演女優賞のジャクリン・ホセさんは、日本でニュースになっただろうか。

「ローサ」が傑作すぎて、星4.3だが、甲乙つけがたし。

実在したボクサーのボクシング映画は数あれど、日本発、本場フィリピン人監督が描いた英雄は、名誉を超越した、静かで深い愛に満ちている。

犯罪と貧困ばかりではないフィリピン。道路は舗装されていなくても、映画をはじめ文化芸術面、一部教育面は、日本よりはるかに上。

ロケ地はジェネラル・サントスの港は現地だろうか?

マニラ、バナナの葉っぱ、スプーンとフォーク、手で食べるごはん、ロザリオ、ペソ紙幣、ジプニー、底抜けに明るい人たち、おばちゃんたちの笑い声、フィリピンなまりの英語。
思い出つまったフィリピンに今すぐ帰りたい。
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